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わかってない奴がわかったつもりで書き留める超準解析(その8) [数学]

【超準解析について生半可な知識しかない僕が、わかったつもりの内容をちょっとずつ書き留めていきます。不正確な内容や誤りもあることをご承知ください。】

(8) 全有界+完備 ⇔ コンパクト

 今回も前回につづき、距離空間$X$とその超準モデル${}^*X$を対象とします。
 今回の目的は、タイトルにある定理を超準モデルを用いて証明することです。そのために「全有界」「完備」「コンパクト」のそれぞれの概念が次表に示す同値条件で表されることを証明します。$A$は$X$の部分集合、$\mathbb{R}^+$は正実数の全体とします。

距離空間上の概念 超準モデル上の同値条件
$A$が全有界 $\forall y \in {}^*A \, \forall \epsilon \in \mathbb{R}^+ \, \exists x \in A \, ({}^*d(y,x) < \epsilon )$
$A$が完備 $\forall y \in {}^*A \, (\forall \epsilon \in \mathbb{R}^+ \, \exists x \in A \, ({}^*d(y,x) < \epsilon ) \to \exists x \in A \, (y \approx x)) $
$A$がコンパクト $\forall y \in {}^*A \, \exists x \in A \, (y \approx x)$


 一見複雑なようですが、これらの式を上から順に$(1),(2),(3)$としましょう。各式には全体に $\forall y \in {}^*A$ がかかっているので、これを取り除きます。すると$(2)$の式は $(1) \to (3)$ と同じになっていることがわかります。さらに$(3)$から$(1)$が従うことは「無限に近い」ことの定義から明らかです。これらより、
\[ (1) \land ( \ (1) \to (3) \ ) \Leftrightarrow (3) \]
すなわち
\[ (1) \land (2) \Leftrightarrow (3) \]
となるので、タイトルの関係が成立することがこれで示されたことになります。

 それでは、各概念が超準モデル上の同値条件で表されることを順に証明していきます。まず、$A$が全有界とは、任意の正実数$\epsilon$に対して有限個の半径$\epsilon$の開球で$A$を覆えるということでした。

【定理1】$X$の部分集合$A$が全有界であることと、 \[ \forall y \in {}^*A \, \forall \epsilon \in \mathbb{R}^+ \, \exists x \in A \, ({}^*d(y,x) < \epsilon ) \tag{1} \] が成り立つことは同値である。

(証明)$A$が空集合のときは自明だから、以下$A$は空でないとする。
 $A$は全有界とする。任意に正実数$\epsilon$をとると、有限個の$A$の点 $a_1, a_2, \cdots a_n$ が存在して、これらを中心とする半径$\epsilon$の開球で$A$を覆うことができるから、
\[ \forall y \in A \, (d(y,a_1) < \epsilon \lor d(y,a_2) < \epsilon \lor \cdots \lor d(y,a_n) < \epsilon ) \]
が成り立つ。移行原理より
\[ \forall y \in {}^*A \, ({}^*d(y,a_1) < \epsilon \lor {}^*d(y,a_2) < \epsilon \lor \cdots \lor {}^*d(y,a_n) < \epsilon ) \]
であるから、
\[ \forall y \in {}^*A \, \exists x \in A \, ({}^*d(y,x) < \epsilon ) \]
が成り立つ。$\epsilon$は任意の正実数だから$(1)$が成り立つ。
 逆を示すため、$A$は$(1)$をみたし、かつ全有界でないと仮定する。このときある正実数$\epsilon$をとると、どのような$A$の有限個の点をとってもそれらを中心とする半径$\epsilon$の開球で$A$を覆うことができない。この$\epsilon$に対し、$A$の点列 $\{ a_k \}$ を次のように帰納的に定める。まず$A$の要素を1つとって$a_0$とする。$a_0, \cdots , a_k$ が定まったとすると、$A$が全有界でないという仮定より、
\[A \setminus (U(a_0,\epsilon) \cup U(a_1,\epsilon) \cup \cdots \cup U(a_k,\epsilon)) \neq \emptyset \]
(ただし $U(a, \epsilon)$ は$a$を中心とする半径$\epsilon$の開球を表す)であるから、左辺の要素を1つとって$a_{k+1}$とする。こう定めた点列 $\{ a_k \}$ は明らかに
\[ \forall m,n \in \mathbb{N} \, (d(a_m,a_n) \ge \epsilon) \]
をみたすから、点列の超準拡大を考えると、移行原理より
\[ \forall m,n \in {}^*\mathbb{N} \, ({}^*d(a_m,a_n) \ge \epsilon) \]
が成り立つ。一方、ある無限大超自然数$n$をとると、$a_n \in {}^*A$ と$(1)$より ${}^*d(a_n,x) < \epsilon /2$ をみたす $x \in A$ が存在し、この$x$は
\[ \exists m \in {}^*\mathbb{N} \, ({}^*d(a_m,x) < \epsilon /2) \]
をみたすから、移行原理より
\[ \exists m \in \mathbb{N} \, (d(a_m,x) < \epsilon /2) \]
をみたす。すると上式をみたす自然数$m$に対して
\[ {}^*d(a_m,a_n) \le d(a_m,x) + {}^*d(a_n,x) < \epsilon /2 + \epsilon /2 = \epsilon \]
となるが、これは矛盾である。□

 次に完備性についての証明に移ります。完備性とはコーシー列が必ず収束するということでした。第5回で実数空間について証明した数列に関する結果は一般の距離空間の点列についても同様に成立しますので、これを利用します。

【定理2】$X$の部分集合$A$が完備であることと、 \[ \forall y \in {}^*A \, (\forall \epsilon \in \mathbb{R}^+ \, \exists x \in A \, ({}^*d(y,x) < \epsilon ) \to \exists x \in A \, (y \approx x)) \tag{2} \] が成り立つことは同値である。

(証明)$A$が空集合のときは自明だから、以下$A$は空でないとする。
 $A$は完備とする。任意に
\[ \forall \epsilon \in \mathbb{R}^+ \, \exists x \in A \, ({}^*d(y,x) < \epsilon ) \]
をみたす $y \in {}^*A$ をとる。この$y$に対して
\[ \forall k \in \mathbb{N} \, (k>0 \to {}^*d(y,a_k) < 1/k) \]
をみたすような$A$上の点列 $\{ a_k \}$ がとれる。この $\{ a_k \}$ は任意の $0 < m \le n$ をみたす自然数 $m,n$ に対して
\[ d(a_m,a_n) \le {}^*d(y,a_m) + {}^*d(y,a_n) < 1/m + 1/n \le 2/m \]
をみたすからコーシー列で、$A$が完備だから $\{ a_k \}$ はある$A$の点$x$に収束する。ここで $y \not \approx x$ と仮定すると、ある正実数$\epsilon$に対して ${}^*d(y,x) \ge \epsilon$ となるから、
\[ 1/k < \epsilon /2 \land d(a_k,x) < \epsilon /2 \]
が成り立つように十分大きな自然数$k$をとると
\[ {}^*d(y,x) \le {}^*d(y,a_k) + d(a_k,x) < 1/k + \epsilon /2 < \epsilon \]
となって矛盾を生じ、よってこの$x$は $y \approx x$ をみたすから$(2)$が成り立つ。
 逆に、$(2)$が成り立つとする。 $\{ a_k \}$ を$A$上のコーシー列とし、任意に $\epsilon \in \mathbb{R}^+$ をとると、コーシー列の定義より
\[ \forall m,n \in \mathbb{N} \, (m \ge L \land n \ge L \to d(a_m,a_n) < \epsilon) \]
をみたす自然数$L$がとれる。この $\epsilon , L$ に対し、移行原理より
\[ \forall m,n \in {}^*\mathbb{N} \, (m \ge L \land n \ge L \to {}^*d(a_m,a_n) < \epsilon) \]
が成り立つ。そこである無限大超実数$m$を固定して $y=a_m$ とおくと、
\[ \forall n \in {}^*\mathbb{N} \, (n \ge L \to {}^*d(y,a_n) < \epsilon) \]
より ${}^*d(y,a_L) < \epsilon$ が成り立ち、任意の $\epsilon \in \mathbb{R}^+$ に対してこれをみたす $L \in \mathbb{N}$ がとれるから、この$y$は
\[ \forall \epsilon \in \mathbb{R}^+ \, \exists x \in A \, ({}^*d(y,x) < \epsilon ) \]
をみたす。よって$(2)$より
\[ \exists x \in A \, (y \approx x) \]
が成り立ち、これをみたす$x$と任意の無限大超実数$n$に対して、$\{ a_k \}$ がコーシー列であることと第5回【定理2】より、
\[ a_n \approx a_m = y \approx x \]
となるから、第5回【数列の極限の定義】より、$\{ a_k \}$ は$A$の点$x$に収束する。従って$A$は完備である。□

 最後に、コンパクト性についての証明です。これは一般の位相空間についても成立する便利な定理で、超準モデルの広大性を前提とすると簡潔に証明できるのですが、ここでは距離空間の範囲で広大性を用いずに証明します。そのため証明がかなり煩雑になってしまいました(もっと簡潔な証明があればぜひご指摘ください)。

【定理3】$X$の部分集合$A$がコンパクトであることと、 \[ \forall y \in {}^*A \, \exists x \in A \, (y \approx x) \tag{3} \] が成り立つ(部分空間$A$において${}^*A$の点がすべて近標準点である)ことは同値である。

(証明)$A$が空集合のときは自明だから、以下$A$は空でないとする。
 $A$はコンパクトとし、$(3)$が成り立たない、すなわちある $y \in {}^*A$ で任意の $x \in A$ に対して $y \not \approx x$ となるものが存在すると仮定して矛盾を導く。このとき任意の $x \in A$ に対して正実数 $\epsilon _x$ がとれて ${}^*d(y,x) \ge \epsilon _x$ となるようにできる。$\{ U(x,\epsilon _x) \, \mid \, x \in A \}$ は$A$の開被覆だから、$A$のコンパクト性より有限個の点 $a_1,a_2, \cdots a_n \in A$ をとって、
\[ A \subseteq U(a_1,\epsilon _{a_1}) \cup U(a_2,\epsilon _{a_2}) \cup \cdots \cup U(a_n,\epsilon _{a_n}) \]
とすることができる。移行原理より
\[ {}^*A \subseteq {}^*U(a_1,\epsilon _{a_1}) \cup {}^*U(a_2,\epsilon _{a_2}) \cup \cdots \cup {}^*U(a_n,\epsilon _{a_n}) \]
であり、$y \in {}^*A$ だからどれかの $a_k$ に対して $y \in {}^*U(a_k,\epsilon _{a_k})$ すなわち ${}^*d(y,a_k) < \epsilon _{a_k}$ となるが、これは矛盾である。
 逆に、$(3)$が成り立ち、かつ$A$がコンパクトでないと仮定して矛盾を導く。このとき$A$の開被覆 $\mathcal{U}$ でどの有限個も$A$を被覆しないものが存在する。一方$(3)$から明らかに$(1)$が従うから、【定理1】より$A$は全有界である。そこで次のようにして$A$の部分集合の列 $\{ A_k \}$ を帰納的に定める。$A_0 = A$ とする。$A_k \subseteq A$ が $\mathcal{U}$ のどの有限個も $A_k$ を被覆しないように定まったとする。$A_k$ は全有界だから有限個の半径 $1/(k+1)$ の閉球で覆うことができて、そのうち少なくとも1つは $A_k$ との共通部分が $\mathcal{U}$ のどの有限個によっても被覆されない。そのような閉球の1つ $B_k$ をとり、$A_{k+1} = A_k \cap B_k$ として $A_{k+1}$ を定める。こうして定まる $\{ A_k \}$ は、
\[ A=A_0 \supseteq A_1 \supseteq \cdots \supseteq A_k \supseteq A_{k+1} \supseteq \cdots \]
であって、各 $A_k$ は $\mathcal{U}$ のどの有限個によっても被覆されない。当然それらは空でないから、$a_k \in A_k$となる点列 $\{ a_k \}$ がとれて、任意の $k \in \mathbb{N}$ に対し、
\[ \forall n \in \mathbb{N} \, (k \le n \to a_n \in A_k) \]
であるから、移行原理より
\[ \forall n \in {}^*\mathbb{N} \, (k \le n \to a_n \in {}^*A_k) \]
である。そこである無限大超自然数$n$をとって $y = a_n$ とする。$y \in {}^*A_0 ={}^*A$ だから、$(3)$より $y \approx x$ となる $x \in A$ が存在する。任意の $k \in \mathbb{N}$ に対し $y \in {}^*A_{k+1} = {}^*A_k \cap {}^*B_k$ より $y \in {}^*B_k$ で、$B_k$ は閉球だから閉集合、従って第7回で示した閉集合の同値条件より $x \in B_k$ である。一方 $x \in A$ だからある $\mathcal{U}$ の元$V$に対して $x \in V$ であり、$V$は開集合だから十分大きな $k \in \mathbb{N}$ をとると $B_k \subseteq V$ となる( $B_k$ の直径が $2/(k+1)$ だから)。しかし $A_{k+1} = A_k \cap B_k$ は $\mathcal{U}$ のどの有限個でも被覆されないはずだから、これは矛盾である。□

 以上で距離空間におけるタイトルの結果を超準モデルを用いて証明することができました。前回の結果を合わせると、距離空間における(実際には一般の位相空間における)いろいろな定理の証明を、超準モデル上の論理式を用いて簡単に行えることがわかります。

(続く)(前記事)(目次)

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この証明は可算広大性を使用しています。十分に広い集合論的宇宙 U の非自明な初等的拡大 *U を作ると、それは必ず U の可算広大化となるからです。

まず *N-N が空でないことが証明できます。少なくとも1つの標準集合 A に対して A≠*A。移行原理より有限集合 B に対しては B=*B となることが分かるので、A は無限。ゆえに標準単射 f:N→A が存在します。(うるさいことをいえば、可算選択公理を使わないといけない。)移行原理より *f:*N→*A は単射。a∈*A-A を固定する。n∈*N を *f(n)=a となるように取る。この n は N に属さない。(さもなくば移行原理より *f(n)=f(n)∈A となるから。)つまり n∈*N-N。

次に可算広大性を証明しましょう。いま {A_n | n∈N} を標準集合からなり、有限交叉性を持つ可算族とします。U は十分に広いと仮定しているので、この族そのものが U に属します。各 n に対して a_n∈A_0∩…∩A_n を選択するなら {a_n | n∈N} も U に属します。移行原理より ∀n∈*N *a_n∈*A_0∩…∩*A_n が成り立ちます。*N-N の元 m を何でもいいので固定すれば、*a_m は ∩{*A_n | n∈N} に属します。

例えば、Robinsonによるコンパクト性の特徴付け(定理3)の証明では、{A_k | k∈N} という空でない標準集合の減少列に対して {*A_k | k∈N} の共通の元 y を作っています。ここで暗黙に可算広大化を使っているわけです。
by お名前(必須) (2019-03-23 03:20) 

ロイロット博士

 丁寧なご説明ありがとうございます。「十分に広い集合論的宇宙 U の非自明な初等的拡大 *U を作ると、それは必ず U の可算広大化となる」ことがよく理解できました。
by ロイロット博士 (2019-03-23 21:23) 

お名前(必須)

*U が U の広大化になってしまうとはいえ、広大化を明示的に使わない(無限大や無限小などの言葉だけで済ませる)ことには教育的価値があると思います。

どれくらい狭ければ広大化が不成立になるか、というのは興味深い問題です。例えば、N を可算言語(例えば {+, -, 0, 1, <})上の構造と見做すと、N の非自明な初等拡大 M で可算広大化になっていないものが取れます。

N の可算広大化の濃度は |2^N| 以上でなければなりません。M を N の可算広大化とします。A を N の部分集合とし、A_n = {i∈N | ∀k≦n (k∈A ⇔ p_k divides i)} とおくと、A_n は N で定義可能であり、有限交叉性を持ちます。(A の有限部分 A∩[0, n] は素因数分解を使って自然数にコード化できるということ。)したがって *A_n (n∈N) は共通の元 i∈M を持ちます。A = {k∈N | p_k divides i} ですから、i は A の情報を全て持っているわけです。この対応 A→i は単射でなければならないので、|2^N|≦|M| となります。

Löwenheim-Skolem の定理を使えば、N の真の初等的拡大 M で濃度 |2^N| 未満であるものが取れます。この M は可算広大化ではありません。

ご存知だと思いますが、∀ε>0∃x∈A *d(y, x)<ε を満たす y∈*A は pre-nearstandard (pns)、∃x∈A y≈x を満たす y∈*A は nearstandard (ns) と呼ばれます。ですから、これらの用語を用いれば、
全有界 ⇔ *A⊆pns(*A)
完備 ⇔ pns(*A)⊆ns(*A)
コンパクト ⇔ *A⊆ns(*A)
と綺麗に書けるので、証明の見通しがより良くなります。(なお ns(*A)⊆pns(*A)⊆*A は自明。)
by お名前(必須) (2019-03-24 05:05) 

ロイロット博士

 ありがとうございます。浅学につき pns という用語は知りませんでした。おっしゃる通り綺麗に書けて一発で理解できますね。
 しかし、「N の非自明な初等拡大 M で可算広大化になっていないものが取れる」となると、そのMに対しては可算広大性が使えないはずですが、記事の【定理3】は距離空間ならば成立するつもりで書いたので、(Nも距離空間化できるので)証明のどこかに誤りもしくは前提記載不足があるということになるのでしょうか。よく読み返してみます。
by ロイロット博士 (2019-03-24 17:53) 

お名前(必須)

本文の証明は距離空間 X の初等拡大 *X を使っているわけではなく、X を含む十分に大きな集合論的モデル U の初等拡大 *U を使っています。ですから可算広大性は使えます。
by お名前(必須) (2019-03-25 22:10) 

ロイロット博士

ありがとうございます。理解できた気がします。
by ロイロット博士 (2019-03-25 23:55) 

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