高知県北部 早明浦ダムと吉野川上流沿いを謎の路線バスで行く [バス]
新緑のきれいな時期で天気もよかったので、1泊2日で高知へ遊びに行ってきました。
目的はとさでん交通の路面電車に乗ることと、前から見てみたかった四国の水がめ「早明浦ダム」を路線バスで訪問することです。
ネットで調べると、結構な距離を路線バスでつなぐことができました。
次の地図のルートです。
このルートのうち、早明浦ダムのある土佐町田井から吉野川沿いに大川村を通り、いの町長沢までは「嶺北観光自動車」という会社が路線バスを運営していますが、ウェブサイトを持っていないので時刻などは高知県が運営する「アクセスこうち」のサイトで調べるしかありません。なんとか時刻表がつながったのでとにかく行ってみましたが、実際行ってみても益々謎の多いバス路線でした。
早朝に大阪を出発し、土讃線の特急を大杉駅で下車します。
大豊町の中心地ですが、駅前は吉野川の支流穴内川が流れるのどかな場所です。少し歩くとファミリーマートがあるので、この先何もないことを考えて昼食と飲料を仕入れました。
高知市内からはるばるやってくるとさでん交通バスに乗り、吉野川本流に沿って田井方面に向かいます。
本山町の中心地を抜けると、まもなく早明浦ダムが見えてきます。
ダムの最寄りの田井中島で下車し、まずは雄大なダムを下から眺めます。
ダムの上までは傾斜はきついですが徒歩で20分ほどの道のりです。
いつも渇水時のニュース映像しか見ていなかった早明浦ダムを、ようやくこの目で見ることができました。この日はまずまず水をたたえているようです。
吉野川にあるダムですが、香川用水や各分水路を通じて四国全県に水を供給する、まさに「四国のいのち」です。
この先のバスに乗り継ぐには下まで降りて田井に行けばいいのですが、時間があるのでダム湖に沿って1時間弱ほど歩き、途中の南越トンネルから乗ることにします。
ウグイスが鳴き緑があふれる気持ちのいい道です。
マピオンの地図によるとトンネルを出たこのあたりにバス停があるはずなのですが、さてそれらしきものが見当たりません。これは困りました。
仕方がないので嶺北観光自動車の事務所に電話をかけ(幸い携帯の電波は飛んでいました)、自分の居場所を伝えてバスの時刻と停留所の場所を聞いたところ、そのあたりでバスが来たら手を上げて止めてくださいとのこと。
無事に乗ることができました。
「アクセスこうち」で調べた時刻表によるとこのバスは黒丸行きで、日の浦方面には途中の大川局前で乗り換える必要があるはずですが、運転手さんに行き先を告げたところ「このまま乗れば日の浦まで行きます」とのことで、ますます謎は深まります。
ともあれ、ダム湖沿いに大川村に向けて走って行きます。
大川村の中心地の大川局前で黒丸行のバスに接続するのですが、このように向かい合わせにドアを横付けして究極の乗り換えを実現していました。
大川村の中心地を抜けるとまもなくダム湖が途切れ、吉野川の上流の景色のいい渓谷を走ります。
いの町に入ってまもなく、脇道に入って終点の日の浦局前に着きます。ここで乗り換えのはずなのですが、このバスが引き続き長沢まで行くので、途中下車してまた同じバスに戻ることになりました。運賃も終点で払えばいいとのことです。色々と想定外が続くバスです。
発車まで20分ほど周囲を散策しました。吉野川の流れが綺麗です。
この黄色い柱がバス標柱です。運転手さんによると標柱のメンテナンスがほとんどできてなくてわからなくなったバス停も多いそうです。
同じバスに乗って少し走り、本当の終点の長沢に着きました。
このあたりは旧本川村にあたり、吉野川の最上流地域です。
ここからは県交北部交通の高知市内行バスに乗ります。かなりのロングラン路線です。
吉野川上流の渓谷沿いに少し遡って分水嶺のトンネルを抜けると、とたんにハイランドハイウェイの風景に変わります。四国の地形は本当にダイナミックです。
ここからは仁淀川水系を下って行きます。
仁淀川の本流に合流して広々とした川筋を走り、伊野町内に入ります。
バスはこのまま高知市内まで行きますが、途中の伊野駅前で下車しました。ここからはとさでん交通伊野線の電車が走っています。
憧れの四国の水がめ早明浦ダムを見て、さらにその奥の吉野川上流までバスで訪れ、グルっとひとつながりで町まで下りて来るルートに乗れました。四国は本当に自然豊かで奥が深いです。
「路線バス歩き」のすすめ(目次)へ
目的はとさでん交通の路面電車に乗ることと、前から見てみたかった四国の水がめ「早明浦ダム」を路線バスで訪問することです。
ネットで調べると、結構な距離を路線バスでつなぐことができました。
次の地図のルートです。
このルートのうち、早明浦ダムのある土佐町田井から吉野川沿いに大川村を通り、いの町長沢までは「嶺北観光自動車」という会社が路線バスを運営していますが、ウェブサイトを持っていないので時刻などは高知県が運営する「アクセスこうち」のサイトで調べるしかありません。なんとか時刻表がつながったのでとにかく行ってみましたが、実際行ってみても益々謎の多いバス路線でした。
早朝に大阪を出発し、土讃線の特急を大杉駅で下車します。
大豊町の中心地ですが、駅前は吉野川の支流穴内川が流れるのどかな場所です。少し歩くとファミリーマートがあるので、この先何もないことを考えて昼食と飲料を仕入れました。
高知市内からはるばるやってくるとさでん交通バスに乗り、吉野川本流に沿って田井方面に向かいます。
本山町の中心地を抜けると、まもなく早明浦ダムが見えてきます。
ダムの最寄りの田井中島で下車し、まずは雄大なダムを下から眺めます。
ダムの上までは傾斜はきついですが徒歩で20分ほどの道のりです。
いつも渇水時のニュース映像しか見ていなかった早明浦ダムを、ようやくこの目で見ることができました。この日はまずまず水をたたえているようです。
吉野川にあるダムですが、香川用水や各分水路を通じて四国全県に水を供給する、まさに「四国のいのち」です。
この先のバスに乗り継ぐには下まで降りて田井に行けばいいのですが、時間があるのでダム湖に沿って1時間弱ほど歩き、途中の南越トンネルから乗ることにします。
ウグイスが鳴き緑があふれる気持ちのいい道です。
マピオンの地図によるとトンネルを出たこのあたりにバス停があるはずなのですが、さてそれらしきものが見当たりません。これは困りました。
仕方がないので嶺北観光自動車の事務所に電話をかけ(幸い携帯の電波は飛んでいました)、自分の居場所を伝えてバスの時刻と停留所の場所を聞いたところ、そのあたりでバスが来たら手を上げて止めてくださいとのこと。
無事に乗ることができました。
「アクセスこうち」で調べた時刻表によるとこのバスは黒丸行きで、日の浦方面には途中の大川局前で乗り換える必要があるはずですが、運転手さんに行き先を告げたところ「このまま乗れば日の浦まで行きます」とのことで、ますます謎は深まります。
ともあれ、ダム湖沿いに大川村に向けて走って行きます。
大川村の中心地の大川局前で黒丸行のバスに接続するのですが、このように向かい合わせにドアを横付けして究極の乗り換えを実現していました。
大川村の中心地を抜けるとまもなくダム湖が途切れ、吉野川の上流の景色のいい渓谷を走ります。
いの町に入ってまもなく、脇道に入って終点の日の浦局前に着きます。ここで乗り換えのはずなのですが、このバスが引き続き長沢まで行くので、途中下車してまた同じバスに戻ることになりました。運賃も終点で払えばいいとのことです。色々と想定外が続くバスです。
発車まで20分ほど周囲を散策しました。吉野川の流れが綺麗です。
この黄色い柱がバス標柱です。運転手さんによると標柱のメンテナンスがほとんどできてなくてわからなくなったバス停も多いそうです。
同じバスに乗って少し走り、本当の終点の長沢に着きました。
このあたりは旧本川村にあたり、吉野川の最上流地域です。
ここからは県交北部交通の高知市内行バスに乗ります。かなりのロングラン路線です。
吉野川上流の渓谷沿いに少し遡って分水嶺のトンネルを抜けると、とたんにハイランドハイウェイの風景に変わります。四国の地形は本当にダイナミックです。
ここからは仁淀川水系を下って行きます。
仁淀川の本流に合流して広々とした川筋を走り、伊野町内に入ります。
バスはこのまま高知市内まで行きますが、途中の伊野駅前で下車しました。ここからはとさでん交通伊野線の電車が走っています。
憧れの四国の水がめ早明浦ダムを見て、さらにその奥の吉野川上流までバスで訪れ、グルっとひとつながりで町まで下りて来るルートに乗れました。四国は本当に自然豊かで奥が深いです。
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わかってない奴がわかったつもりで書き留める超準解析(その11) [数学]
【超準解析について生半可な知識しかない僕が、わかったつもりの内容をちょっとずつ書き留めていきます。不正確な内容や誤りもあることをご承知ください。】
(11) 距離空間の完備化
今回は超準モデルを用いて距離空間の完備化を構成します。距離空間 $\langle X,d_X \rangle, \langle Y,d_Y \rangle$ について、$Y$が$X$の完備化であるとは、
① $X$から$Y$への距離を保つ単射$\iota$があって、像 $\iota [X]$ が$Y$において稠密である。
② $Y$は完備である。
の両方をみたすことをいいます。任意の距離空間にはその完備化が存在し、それはある意味で一意的に定まるのですが、ここでは一意性については割愛します。
完備化の構成自体は極めて簡単です。
$\hat{X}$の元は$(1)$より明らかに有限点なので、$d_Y$の値は実数値として代表元のとり方によらず定まります。さらに$d_Y$が距離関数の性質をみたすことも明らかですから、$\langle Y,d_Y \rangle$ は距離空間です。これが $\langle X,d_X \rangle$ の完備化の性質をもつことを以下順を追って証明します。
まず $X \subseteq \hat{X}$ であることから、$\iota : X \to Y$を
\[ \iota(x) = [x] \]
で定めます。これは明らかに単射で距離を保つ、すなわち、
\[ \forall u,v \in X \, (d_X(u,v) = d_Y(\iota(u), \iota(v))) \]
が成り立ちますから、移行原理より
\[ \forall u,v \in {}^*X \, ({}^*d_X(u,v) = {}^*d_Y({}^*\iota(u), {}^*\iota(v))) \tag{2} \]
も成り立ちます。ここで超準拡大${}^*\iota$は${}^*X$から${}^*Y$への関数です。
$\iota$によって$X$を$Y$に埋め込んで $X \subseteq Y$ とみなすこともできますが、そうしてしまうと以下の証明で頭が混乱しますので、ここではあえてそのような埋め込みはしません。
完備化の性質①は直ちにわかります。
(証明)任意の$Y$の元 $[x]$($x \in \hat{X}$)と正実数$\epsilon$に対して、$(1)$より ${}^*d_X(x,z) < \epsilon$ をみたす $z \in X$ が存在し、
\[ d_Y([x], \iota(z)) = d_Y([x], [z]) = \mathrm{st}({}^*d_X(x,z)) \le \epsilon \]
となるから、$\iota[X]$ は$Y$において稠密である。□
完備化の性質②を示すために、一見あたりまえに思える次の補題を証明します。
(証明)任意に $x \in \hat{X}$ をとる。任意の正実数$\epsilon$に対して、【補題1】の証明と同様に、${}^*d_X(x,z) < \epsilon$ をみたす $z \in X$ が存在して $d_Y([x],\iota(z)) \le \epsilon$ となる。さらに$(2)$より
\[ {}^*d_Y({}^*\iota(x),\iota(z)) = {}^*d_X(x,z) < \epsilon \]
であるから、
\[ {}^*d_Y({}^*\iota(x),[x]) \le {}^*d_Y({}^*\iota(x),\iota(z)) + d_Y([x],\iota(z)) < 2 \epsilon \]
が成り立つ。$\epsilon$は任意の正実数だから ${}^*\iota(x) \approx [x]$ である。□
この結果を用いると、完備性が次のようにコーシー列を用いずに証明できます。
(証明)第8回【定理2】より、
\[ \forall y \in {}^*Y \, (\forall \epsilon \in \mathbb{R}^+ \, \exists x \in Y \, ({}^*d_Y(y,x) < \epsilon) \to \exists x \in Y \, (y \approx x)) \tag{3} \]
が成り立つことを示せばよい。任意に
\[ \forall \epsilon \in \mathbb{R}^+ \, \exists x \in Y \, ({}^*d_Y(y,x) < \epsilon) \tag{4} \]
をみたす $y \in {}^*Y$ をとる。$\iota[X]$ が$Y$において稠密だから、第7回の表の最下段の結果と ${}^*(\iota[X]) = {}^*\iota[{}^*X]$ より、${}^*\iota(x) \approx y$ となる $x \in {}^*X$ が存在する。任意に正実数$\epsilon$をとると、$(4)$より ${}^*d_Y(y,[z]) < \epsilon /3$ となる $z \in \hat{X}$ が存在し、これに対し$(1)$より ${}^*d_X(z,w) < \epsilon /3$ となる $w \in X$ が存在する。$(2)$より
\[ {}^*d_Y({}^*\iota(z),\iota(w)) = {}^*d_X(z,w) < \epsilon /3 \]
であって、さらに【補題2】より ${}^*\iota(z) \approx [z]$ であるから、
\begin{align}
{}^*d_X(x,w) &= {}^*d_Y({}^*\iota(x),\iota(w)) \\
&\le {}^*d_Y({}^*\iota(x),y) + {}^*d_Y(y,[z]) + {}^*d_Y([z],{}^*\iota(z)) + {}^*d_Y({}^*\iota(z),\iota(w)) \\
&\le \epsilon /3 + \epsilon /3 \\
&< \epsilon
\end{align}
となり、これより $x \in \hat{X}$ であることがわかる。よって $[x] \in Y$ かつ【補題2】より $[x] \approx {}^*\iota(x) \approx y$ となるから、$y$は
\[ \exists x \in Y \, (y \approx x) \]
をみたし、従って$(3)$が成り立つから$Y$は完備である。□
以上【補題1】〜【補題3】によって、この構成で得られた距離空間$Y$が$X$の完備化であることが証明できました。
(続く)(前記事)(目次)
(11) 距離空間の完備化
今回は超準モデルを用いて距離空間の完備化を構成します。距離空間 $\langle X,d_X \rangle, \langle Y,d_Y \rangle$ について、$Y$が$X$の完備化であるとは、
① $X$から$Y$への距離を保つ単射$\iota$があって、像 $\iota [X]$ が$Y$において稠密である。
② $Y$は完備である。
の両方をみたすことをいいます。任意の距離空間にはその完備化が存在し、それはある意味で一意的に定まるのですが、ここでは一意性については割愛します。
完備化の構成自体は極めて簡単です。
【完備化の構成】距離空間 $\langle X,d_X \rangle$ に対し、${}^*X$の元$x$で、
\[ \forall \epsilon \in \mathbb{R}^+ \, \exists z \in X \, ({}^*d_X(x,z) < \epsilon) \tag{1} \]
をみたすものの全体を$\hat{X}$とし、これを関係$\approx$で割った商集合を$Y$とする。さらに $d_Y : Y^2 \to \mathbb{R}$ を
\[ d_Y([x],[y]) = \mathrm{st}({}^*d_X(x,y)) \]
によって定める(ただし $[x],[y]$ はそれぞれ $x,y \in \hat{X}$ を代表元とする$Y$の元を表す)。このとき $\langle Y,d_Y \rangle$ は $\langle X,d_X \rangle$ の完備化である。
$\hat{X}$の元は$(1)$より明らかに有限点なので、$d_Y$の値は実数値として代表元のとり方によらず定まります。さらに$d_Y$が距離関数の性質をみたすことも明らかですから、$\langle Y,d_Y \rangle$ は距離空間です。これが $\langle X,d_X \rangle$ の完備化の性質をもつことを以下順を追って証明します。
まず $X \subseteq \hat{X}$ であることから、$\iota : X \to Y$を
\[ \iota(x) = [x] \]
で定めます。これは明らかに単射で距離を保つ、すなわち、
\[ \forall u,v \in X \, (d_X(u,v) = d_Y(\iota(u), \iota(v))) \]
が成り立ちますから、移行原理より
\[ \forall u,v \in {}^*X \, ({}^*d_X(u,v) = {}^*d_Y({}^*\iota(u), {}^*\iota(v))) \tag{2} \]
も成り立ちます。ここで超準拡大${}^*\iota$は${}^*X$から${}^*Y$への関数です。
$\iota$によって$X$を$Y$に埋め込んで $X \subseteq Y$ とみなすこともできますが、そうしてしまうと以下の証明で頭が混乱しますので、ここではあえてそのような埋め込みはしません。
完備化の性質①は直ちにわかります。
【補題1】$\iota [X]$ は$Y$において稠密である。
(証明)任意の$Y$の元 $[x]$($x \in \hat{X}$)と正実数$\epsilon$に対して、$(1)$より ${}^*d_X(x,z) < \epsilon$ をみたす $z \in X$ が存在し、
\[ d_Y([x], \iota(z)) = d_Y([x], [z]) = \mathrm{st}({}^*d_X(x,z)) \le \epsilon \]
となるから、$\iota[X]$ は$Y$において稠密である。□
完備化の性質②を示すために、一見あたりまえに思える次の補題を証明します。
【補題2】任意の $x \in \hat{X}$ に対して ${}^*\iota(x) \approx [x]$ である。
(証明)任意に $x \in \hat{X}$ をとる。任意の正実数$\epsilon$に対して、【補題1】の証明と同様に、${}^*d_X(x,z) < \epsilon$ をみたす $z \in X$ が存在して $d_Y([x],\iota(z)) \le \epsilon$ となる。さらに$(2)$より
\[ {}^*d_Y({}^*\iota(x),\iota(z)) = {}^*d_X(x,z) < \epsilon \]
であるから、
\[ {}^*d_Y({}^*\iota(x),[x]) \le {}^*d_Y({}^*\iota(x),\iota(z)) + d_Y([x],\iota(z)) < 2 \epsilon \]
が成り立つ。$\epsilon$は任意の正実数だから ${}^*\iota(x) \approx [x]$ である。□
この結果を用いると、完備性が次のようにコーシー列を用いずに証明できます。
【補題3】$Y$は完備である。
(証明)第8回【定理2】より、
\[ \forall y \in {}^*Y \, (\forall \epsilon \in \mathbb{R}^+ \, \exists x \in Y \, ({}^*d_Y(y,x) < \epsilon) \to \exists x \in Y \, (y \approx x)) \tag{3} \]
が成り立つことを示せばよい。任意に
\[ \forall \epsilon \in \mathbb{R}^+ \, \exists x \in Y \, ({}^*d_Y(y,x) < \epsilon) \tag{4} \]
をみたす $y \in {}^*Y$ をとる。$\iota[X]$ が$Y$において稠密だから、第7回の表の最下段の結果と ${}^*(\iota[X]) = {}^*\iota[{}^*X]$ より、${}^*\iota(x) \approx y$ となる $x \in {}^*X$ が存在する。任意に正実数$\epsilon$をとると、$(4)$より ${}^*d_Y(y,[z]) < \epsilon /3$ となる $z \in \hat{X}$ が存在し、これに対し$(1)$より ${}^*d_X(z,w) < \epsilon /3$ となる $w \in X$ が存在する。$(2)$より
\[ {}^*d_Y({}^*\iota(z),\iota(w)) = {}^*d_X(z,w) < \epsilon /3 \]
であって、さらに【補題2】より ${}^*\iota(z) \approx [z]$ であるから、
\begin{align}
{}^*d_X(x,w) &= {}^*d_Y({}^*\iota(x),\iota(w)) \\
&\le {}^*d_Y({}^*\iota(x),y) + {}^*d_Y(y,[z]) + {}^*d_Y([z],{}^*\iota(z)) + {}^*d_Y({}^*\iota(z),\iota(w)) \\
&\le \epsilon /3 + \epsilon /3 \\
&< \epsilon
\end{align}
となり、これより $x \in \hat{X}$ であることがわかる。よって $[x] \in Y$ かつ【補題2】より $[x] \approx {}^*\iota(x) \approx y$ となるから、$y$は
\[ \exists x \in Y \, (y \approx x) \]
をみたし、従って$(3)$が成り立つから$Y$は完備である。□
以上【補題1】〜【補題3】によって、この構成で得られた距離空間$Y$が$X$の完備化であることが証明できました。
(続く)(前記事)(目次)