紅葉の奥三河から南信州にコミュニティーバスで抜ける(その2) [バス]
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【2日目】(稲武)どんぐりの湯前→根羽→阿智大橋→昼神温泉→駒場→名古屋→(大阪)鶴橋
2日目はバスの出発時刻が早いので、朝6時に起きて朝食も取らずに出発です。
宿の人がおにぎりを作ってくれました。
昨日は夜に到着したので、朝になって初めて見る稲武町の風景です。
チェックアウト時にもらったGoToトラベルのクーポンです。愛知県の隣接県としてちゃんと長野県でも使えると書かれています。
稲武地域バスに乗車して、GoTo長野県。
愛知県に注がれる矢作川の本流に合流し、川沿いに走るといつの間にか県境を越えて長野県根羽村に入ります。地形的にはまだ愛知県との繋がりが強い地域といえます。
意外と早く、終点の根羽に到着しました。
次のバスまで1時間以上あるので、周辺を散歩します。なかなか雰囲気のある山村の中心街です。
根羽村だからかネバーランドなる施設があるようです。
村はずれの矢作川は景色がいい。
おそらくこの近辺で唯一の食料雑貨が買える店。
旧村役場と新村役場。
時間になったので、西部コミュニティバスに乗って阿智村を目指します。
これがネバーランド。
高原の雰囲気のある平谷村を通過します。この村もまだ矢作川の水系です。
標高1000m以上の治部坂峠のトンネルを越えると、阿智村に入り、下り坂に転じます。
ここからは天竜川の水系になり、遠くに高い山並みも見えるようになって、信州に来たという実感が湧きます。
バスは阿智村の中心部まで行きますが、途中の阿智川橋で下車し、昼神温泉郷に向かって歩くことにします。
温泉旅館が立ち並ぶ昼神温泉ですが、日帰り温泉施設もあるので一風呂浴びます。
もちろん露天風呂もあって、なかなかいい温泉でした。
さて、風呂のあとは阿智村の中心である駒場まで行きたいのですが、いい時間にバスがないので、4km程度の道のりを歩くことにします。それなりに有名な温泉街だからもっとバス便があっても良さそうですが、休日に昼神温泉に乗り入れる信南バスは1日2本しかありません。
同じ村でも阿智村は根羽村よりだいぶ賑やかです。
目的のバスルートは無事に乗り通せたので、ここからは名古屋行きの高速バスで帰路につきます。町外れの坂道をちょっと登ると中央道のサービスエリアへの入口があり、中に入ると高速バスの駒場の停留所がありました。
信南交通の高速バスに乗り、1時間半ほどで名古屋に到着です。
帰路の近鉄は「ひのとり」です。やはり新造車は快適です。
奥三河から南信州という行ったことのないルートを路線バスで走破し、天気も良く紅葉や温泉や食事も堪能できて、満足の旅行でした。
今年はこれを最後に旅行は封印し、以降はコロナに注意して大人しく過ごすようにします。
「路線バス歩き」のすすめ(目次)へ
【2日目】(稲武)どんぐりの湯前→根羽→阿智大橋→昼神温泉→駒場→名古屋→(大阪)鶴橋
2日目はバスの出発時刻が早いので、朝6時に起きて朝食も取らずに出発です。
宿の人がおにぎりを作ってくれました。
昨日は夜に到着したので、朝になって初めて見る稲武町の風景です。
チェックアウト時にもらったGoToトラベルのクーポンです。愛知県の隣接県としてちゃんと長野県でも使えると書かれています。
稲武地域バスに乗車して、GoTo長野県。
愛知県に注がれる矢作川の本流に合流し、川沿いに走るといつの間にか県境を越えて長野県根羽村に入ります。地形的にはまだ愛知県との繋がりが強い地域といえます。
意外と早く、終点の根羽に到着しました。
次のバスまで1時間以上あるので、周辺を散歩します。なかなか雰囲気のある山村の中心街です。
根羽村だからかネバーランドなる施設があるようです。
村はずれの矢作川は景色がいい。
おそらくこの近辺で唯一の食料雑貨が買える店。
旧村役場と新村役場。
時間になったので、西部コミュニティバスに乗って阿智村を目指します。
これがネバーランド。
高原の雰囲気のある平谷村を通過します。この村もまだ矢作川の水系です。
標高1000m以上の治部坂峠のトンネルを越えると、阿智村に入り、下り坂に転じます。
ここからは天竜川の水系になり、遠くに高い山並みも見えるようになって、信州に来たという実感が湧きます。
バスは阿智村の中心部まで行きますが、途中の阿智川橋で下車し、昼神温泉郷に向かって歩くことにします。
温泉旅館が立ち並ぶ昼神温泉ですが、日帰り温泉施設もあるので一風呂浴びます。
もちろん露天風呂もあって、なかなかいい温泉でした。
さて、風呂のあとは阿智村の中心である駒場まで行きたいのですが、いい時間にバスがないので、4km程度の道のりを歩くことにします。それなりに有名な温泉街だからもっとバス便があっても良さそうですが、休日に昼神温泉に乗り入れる信南バスは1日2本しかありません。
同じ村でも阿智村は根羽村よりだいぶ賑やかです。
目的のバスルートは無事に乗り通せたので、ここからは名古屋行きの高速バスで帰路につきます。町外れの坂道をちょっと登ると中央道のサービスエリアへの入口があり、中に入ると高速バスの駒場の停留所がありました。
信南交通の高速バスに乗り、1時間半ほどで名古屋に到着です。
帰路の近鉄は「ひのとり」です。やはり新造車は快適です。
奥三河から南信州という行ったことのないルートを路線バスで走破し、天気も良く紅葉や温泉や食事も堪能できて、満足の旅行でした。
今年はこれを最後に旅行は封印し、以降はコロナに注意して大人しく過ごすようにします。
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紅葉の奥三河から南信州にコミュニティーバスで抜ける(その1) [バス]
紅葉真っ盛りの3連休なので、GoToトラベルを利用して乗りバス遠征をしてきました。
一人で静かに行動したので、感染拡大には加担していないと信じたい。
今回は、愛知県の豊田市から長野県の飯田市の手前の阿智村まで、徒歩区間なしの完全バス乗り継ぎです。
愛知県と長野県は結構長い県境を接していますが、この県境を越える定期運行の公共交通機関は今回乗車したバス路線しかありません(JR飯田線は間に静岡県を挟みます)。
道のりにして96km、最大標高1174mの山地を越えるこのルートを、全てコミュニティーバスの乗り継ぎで通り抜けました。
【1日目】(大阪)鶴橋→名古屋→浄水→香嵐渓→(稲武)どんぐりの湯前
名古屋までは近鉄です。交通費節約のため、近鉄3日間全線フリー切符を購入しました。大阪〜名古屋往復で十分元が取れる値段です。
往路はアーバンライナーで。
名古屋から地下鉄を乗り継いで、名鉄豊田線の浄水まで移動します。今回のバスのスタート地点です。
足助方面に行く「とよたおいでんバス」に乗るのですが、なにやら不穏な表示が。
愛知県有数の紅葉スポット「香嵐渓」があるので、シーズンでは渋滞で例年2時間以上の遅延があると書かれています。
そのまさに紅葉スポットに向かうのに、小型のバスが来ました。大丈夫か?
浄水駅からはガラガラの状態で出発し、豊田市の郊外を走っていきます。
途中の愛知環状鉄道四郷駅からかなり乗車があり満員になったと思ったら、名鉄三河線猿投駅でこの行列。
案の定小型バスでは超満員になり、乗り切れませんでした。せっかく待っていたのに気の毒です。
ちなみにほとんどが外国から働きに来たと思われる若い人たちでした。
超満員のバスは田舎の風景の中を走っていきます。
途中、廃止された名鉄三河線の西中金駅跡を通ります。廃止代替バスを兼ねている路線です。
香嵐渓が近づいたところで、大渋滞に嵌ってしまいました。ノロノロと進んでいきます。
香嵐渓のかなり手前で、若者たちはしびれを切らしてバスを降りて歩いていきました。
結局、約1時間半の遅れで香嵐渓に到着です。
流石に愛知県有数の紅葉の名所だけあって綺麗です。人が大変多かったので、密な場所に入らないよう注意して鑑賞しました。
少し遅い昼食は、いのしし肉入りのドライカレー。
ここからは、さらに奥の旧稲武町方面に向かう「とよたおいでんバス」に乗ります。
もう夕方なので走り出したらすぐに暗くなってきます。あたりは山の中です。
終点の「どんぐりの湯前」到着時にはもう真っ暗でした。
旧稲武町のこのあたりは夏焼温泉という温泉地で、そこの旅館で一泊します。
お風呂も気持ちよかったし、なかなかボリュームのある夕食で腹いっぱいになりました(写真以外に肉鍋と天ぷらが付いてました)。
(その2)へ続く
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一人で静かに行動したので、感染拡大には加担していないと信じたい。
今回は、愛知県の豊田市から長野県の飯田市の手前の阿智村まで、徒歩区間なしの完全バス乗り継ぎです。
愛知県と長野県は結構長い県境を接していますが、この県境を越える定期運行の公共交通機関は今回乗車したバス路線しかありません(JR飯田線は間に静岡県を挟みます)。
道のりにして96km、最大標高1174mの山地を越えるこのルートを、全てコミュニティーバスの乗り継ぎで通り抜けました。
【1日目】(大阪)鶴橋→名古屋→浄水→香嵐渓→(稲武)どんぐりの湯前
名古屋までは近鉄です。交通費節約のため、近鉄3日間全線フリー切符を購入しました。大阪〜名古屋往復で十分元が取れる値段です。
往路はアーバンライナーで。
名古屋から地下鉄を乗り継いで、名鉄豊田線の浄水まで移動します。今回のバスのスタート地点です。
足助方面に行く「とよたおいでんバス」に乗るのですが、なにやら不穏な表示が。
愛知県有数の紅葉スポット「香嵐渓」があるので、シーズンでは渋滞で例年2時間以上の遅延があると書かれています。
そのまさに紅葉スポットに向かうのに、小型のバスが来ました。大丈夫か?
浄水駅からはガラガラの状態で出発し、豊田市の郊外を走っていきます。
途中の愛知環状鉄道四郷駅からかなり乗車があり満員になったと思ったら、名鉄三河線猿投駅でこの行列。
案の定小型バスでは超満員になり、乗り切れませんでした。せっかく待っていたのに気の毒です。
ちなみにほとんどが外国から働きに来たと思われる若い人たちでした。
超満員のバスは田舎の風景の中を走っていきます。
途中、廃止された名鉄三河線の西中金駅跡を通ります。廃止代替バスを兼ねている路線です。
香嵐渓が近づいたところで、大渋滞に嵌ってしまいました。ノロノロと進んでいきます。
香嵐渓のかなり手前で、若者たちはしびれを切らしてバスを降りて歩いていきました。
結局、約1時間半の遅れで香嵐渓に到着です。
流石に愛知県有数の紅葉の名所だけあって綺麗です。人が大変多かったので、密な場所に入らないよう注意して鑑賞しました。
少し遅い昼食は、いのしし肉入りのドライカレー。
ここからは、さらに奥の旧稲武町方面に向かう「とよたおいでんバス」に乗ります。
もう夕方なので走り出したらすぐに暗くなってきます。あたりは山の中です。
終点の「どんぐりの湯前」到着時にはもう真っ暗でした。
旧稲武町のこのあたりは夏焼温泉という温泉地で、そこの旅館で一泊します。
お風呂も気持ちよかったし、なかなかボリュームのある夕食で腹いっぱいになりました(写真以外に肉鍋と天ぷらが付いてました)。
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紅葉の比良山系裏手を廃止予定バス路線で辿る [バス]
11月になって天気のよい日が続き、あちこちで紅葉も見られるようになりました。
コロナが増えてきていますが、やはり出かけたくなる気持ちを抑えきれません。
今回は、来年春に廃止が予定されている江若交通の堅田葛川線に乗って、比良山系の裏手(西側)ルートを巡ってきました。
天気の良い土曜日、堅田駅に降り立って細川行きのバス乗り場に向かうと、この状況です。
当然予測すべき事態でしたが、比良山系に向かう登山者がバス乗り場に大行列を作っていました。これは果たしてバスに乗れるのかという不安がよぎります。
幸い、江若バスが臨時を1本出してくれたので、無事に細川行きに乗ることができ、座席も確保できました。
一部のバス停マニアには有名な「途中」に向けて登っていきます。
国道367号線に入り、ところどころ紅葉が綺麗な安曇川沿いを走ります。
登山者は坊村で下車して比良山系に向かっていき、ガラガラになったバスはさらに少し走って、終点の細川に到着です。
去年9月末まではこの先も江若バスの路線があったのですが廃止され、今は高島市のコミュニティーバスに乗り継いで朽木支所前まで行けるのですが、そのコミュニティーバスの停留所標柱がどうも付近に見当たりません。まあコミュニティーバスにはありがちなことなので、江若バスの停留所の場所で待つことにします。
所定時間にコミュニティーバスが来たので手を上げて、無事に乗ることができました。
コミュニティーバスらしく何度も安曇川を渡って集落に寄りながら走ります。
終点の朽木支所前には、旧朽木村内の各方面に行くバスが集結していました。
昼飯には少し早いですが小腹が空いたので、道の駅で焼鯖寿司を買って、安曇川の土手で食べながらボーッと過ごします。
まだ時間があるので少し付近を散歩します。学校脇のモミジが綺麗でした。
朽木学校前からは再び江若バスで安曇川駅に向かいます。
山間部を抜けると田園風景が続きます。途中の集落に立ち寄りながら進みます。
イチョウ並木の駅前通りを抜けると、安曇川駅に到着です。
江若バスの堅田葛川線が廃止された後の代替交通機関については、まだ大津市の方針が公表されていないようですが、多分コミュニティーバスか乗合タクシーのようなものができると思われます。ただ登山シーズンの比良登山者の輸送はそれでは到底捌けないので、京都バス(出町柳〜朽木学校前:春から秋の土休日のみ運行)のような登山客向けの路線を臨時路線として残すのかどうか、今後注目したいと思います。
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コロナが増えてきていますが、やはり出かけたくなる気持ちを抑えきれません。
今回は、来年春に廃止が予定されている江若交通の堅田葛川線に乗って、比良山系の裏手(西側)ルートを巡ってきました。
天気の良い土曜日、堅田駅に降り立って細川行きのバス乗り場に向かうと、この状況です。
当然予測すべき事態でしたが、比良山系に向かう登山者がバス乗り場に大行列を作っていました。これは果たしてバスに乗れるのかという不安がよぎります。
幸い、江若バスが臨時を1本出してくれたので、無事に細川行きに乗ることができ、座席も確保できました。
一部のバス停マニアには有名な「途中」に向けて登っていきます。
国道367号線に入り、ところどころ紅葉が綺麗な安曇川沿いを走ります。
登山者は坊村で下車して比良山系に向かっていき、ガラガラになったバスはさらに少し走って、終点の細川に到着です。
去年9月末まではこの先も江若バスの路線があったのですが廃止され、今は高島市のコミュニティーバスに乗り継いで朽木支所前まで行けるのですが、そのコミュニティーバスの停留所標柱がどうも付近に見当たりません。まあコミュニティーバスにはありがちなことなので、江若バスの停留所の場所で待つことにします。
所定時間にコミュニティーバスが来たので手を上げて、無事に乗ることができました。
コミュニティーバスらしく何度も安曇川を渡って集落に寄りながら走ります。
終点の朽木支所前には、旧朽木村内の各方面に行くバスが集結していました。
昼飯には少し早いですが小腹が空いたので、道の駅で焼鯖寿司を買って、安曇川の土手で食べながらボーッと過ごします。
まだ時間があるので少し付近を散歩します。学校脇のモミジが綺麗でした。
朽木学校前からは再び江若バスで安曇川駅に向かいます。
山間部を抜けると田園風景が続きます。途中の集落に立ち寄りながら進みます。
イチョウ並木の駅前通りを抜けると、安曇川駅に到着です。
江若バスの堅田葛川線が廃止された後の代替交通機関については、まだ大津市の方針が公表されていないようですが、多分コミュニティーバスか乗合タクシーのようなものができると思われます。ただ登山シーズンの比良登山者の輸送はそれでは到底捌けないので、京都バス(出町柳〜朽木学校前:春から秋の土休日のみ運行)のような登山客向けの路線を臨時路線として残すのかどうか、今後注目したいと思います。
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「アカンポ( Norbert A'Campo )の実数論について」発表レポート [数学]
先日10/31にオンラインで行われた「第19回関西日曜数学会」で、タイトルの5分間発表をしました。その内容をここで紹介します。
内容は、スイスの数学者 Norbert A’Campo 氏による実数体の構成法の紹介です。
自然数から複素数まで数の体系を構成していく過程の中で、有理数体から実数体を構成する方法が最も複雑で、かつ面白いところです。一般に参考書等でよく紹介されているのは、デデキントの切断を用いる方法や、コーシー列を用いる方法があります(変わったところでは「超有理数体」を用いる方法があり、これは以前の僕のブログでも紹介しました)。
今回紹介したのは、Norbert A’Campo 氏による有理数体$\mathbb{Q}$ではなく整数環$\mathbb{Z}$を元にした新しい実数体の構成法です。
‘‘A natural construction for the real numbers’’ というタイトルで2003年にarXivに投稿されました。リンクはこちらから。
実数の定義自体は上記のように非常に簡単なものです。
実数間に上記のように加法、乗法演算と順序関係を定義すると、これで実数体の公理系(完備性を持つ順序体であること)が全て証明できてしまいます。証明の内容は時間がないので紹介しませんでしたが、ペーパーには数ページで一通り書かれており、それほど難しい内容ではありません。
ここからはペーパーには書かれていませんが、一体この構成法では何をやっているのかということについて僕なりの理解を説明しました。スロープとは結局、ある実数$a$に対する
\[ f_a(x)=ax \]
という形の関数(線形関数)を、整数上の関数で近似したものという理解です。だからスロープの同値類を実数と定義するとうまくいくという話になります。
スロープの特徴づけに関する証明です。「コーシー列は収束する」という実数体の特徴を使います。
スロープが線形関数の近似であることがわかれば、上の演算と順序の定義は極めて自然であることが理解できます。
以上、アカンポの実数論の簡単な紹介でした。
こんな発想で実数体が構成できることに、正直なところ目から鱗という感想を持ちました。
(2020年11月22日追記)
ニコニコ動画に発表の様子が掲載されました。
(2021年2月1日追記)
実数体の構成法を一通り書き出しました。
内容は、スイスの数学者 Norbert A’Campo 氏による実数体の構成法の紹介です。
自然数から複素数まで数の体系を構成していく過程の中で、有理数体から実数体を構成する方法が最も複雑で、かつ面白いところです。一般に参考書等でよく紹介されているのは、デデキントの切断を用いる方法や、コーシー列を用いる方法があります(変わったところでは「超有理数体」を用いる方法があり、これは以前の僕のブログでも紹介しました)。
今回紹介したのは、Norbert A’Campo 氏による有理数体$\mathbb{Q}$ではなく整数環$\mathbb{Z}$を元にした新しい実数体の構成法です。
‘‘A natural construction for the real numbers’’ というタイトルで2003年にarXivに投稿されました。リンクはこちらから。
実数の定義自体は上記のように非常に簡単なものです。
実数間に上記のように加法、乗法演算と順序関係を定義すると、これで実数体の公理系(完備性を持つ順序体であること)が全て証明できてしまいます。証明の内容は時間がないので紹介しませんでしたが、ペーパーには数ページで一通り書かれており、それほど難しい内容ではありません。
ここからはペーパーには書かれていませんが、一体この構成法では何をやっているのかということについて僕なりの理解を説明しました。スロープとは結局、ある実数$a$に対する
\[ f_a(x)=ax \]
という形の関数(線形関数)を、整数上の関数で近似したものという理解です。だからスロープの同値類を実数と定義するとうまくいくという話になります。
スロープの特徴づけに関する証明です。「コーシー列は収束する」という実数体の特徴を使います。
スロープが線形関数の近似であることがわかれば、上の演算と順序の定義は極めて自然であることが理解できます。
以上、アカンポの実数論の簡単な紹介でした。
こんな発想で実数体が構成できることに、正直なところ目から鱗という感想を持ちました。
(2020年11月22日追記)
ニコニコ動画に発表の様子が掲載されました。
(2021年2月1日追記)
実数体の構成法を一通り書き出しました。