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わかってない奴がわかったつもりで書き留める超準解析(その18) [数学]

【超準解析について生半可な知識しかない僕が、わかったつもりの内容をちょっとずつ書き留めていきます。不正確な内容や誤りもあることをご承知ください。】

(18) アレクサンドロフの1点コンパクト化

 前回の続きとして、コンパクトでない空間をコンパクト空間に拡張する1つの手法「アレクサンドロフの1点コンパクト化」を、超準モデルを使って構成する方法を紹介します。

1. 超準モデルから定まる位相

 $X$ を位相が定まっていない無限集合とするとき、その超準モデルを使って、次のようにして $X$ に位相を定めることができます。
 すべての $X$ の点 $x$ に対して $x \in \nu(x)$ をみたす ${}^*X$ の部分集合 $\nu(x) \in \mathscr{P}({}^*X)$ が(何でもよいので)定まっているとします。このとき、
\begin{equation*}
\mathcal{O} = \{ \, A \in \mathscr{P}(X) \, \mid \, \forall x \in A \, (\nu(x) \subseteq {}^*A) \, \}
\end{equation*}
と定めると、この $\mathcal{O}$ は次の開集合系の性質を全てみたします。

   ① $\emptyset \in \mathcal{O} \land X \in \mathcal{O}$
   ② $A \in \mathcal{O} \land B \in \mathcal{O} \to A \cap B \in \mathcal{O}$
   ③ $\forall i \in I \, (A_i \in \mathcal{O}) \to \bigcup_{i \in I} A_i \in \mathcal{O}$

①と②は明らかなので、和集合に関する性質③だけ示しておきます。$\forall i \in I \, (A_i \in \mathcal{O})$ が成り立つとし、$B = \bigcup_{i \in I} A_i$ とします。任意に $x \in B$ をとると、ある $i \in I$ に対して $x \in A_i$ だから $\nu(x) \subseteq {}^*A_i$ となります。$A_i \subseteq B$ だから移行原理より ${}^*A_i \subseteq {}^*B$ となり、従って $\nu(x) \subseteq {}^*B$ となるから $B \in \mathcal{O}$ です。これで $\mathcal{O}$ が開集合系の性質を全てみたすことが示されたので、$X$ に位相が定まります。
 この位相に関して近傍系やモナドが定まりますが、$A$ が点 $x$ の近傍ならば簡単な考察により $\nu(x) \subseteq {}^*A$ がわかるので、$\nu(x) \subseteq \mathrm{monad}(x)$ となります。一般には必ずしもこれらは等しくなりません。
 この方法を使って位相空間 $X$ を $X \subsetneq Y$ となる集合 $Y$ に拡張することを考えます。このため、一般に一方が他方の部分位相空間となるための超準モデルによる同値条件を考察します。
 $X \subseteq Y$ の関係にある位相空間 $X, Y$ がそれぞれあるとします。$X$ と $Y$ の開集合系をそれぞれ $\mathcal{O}_X, \mathcal{O}_Y$ とし、また、$X$ における点 $x$ の近傍系とモナドをそれぞれ $\mathcal{N}_X(x), \mathrm{monad}_X(x)$ とかき、同様に $Y$ における点 $x$ の近傍系とモナドをそれぞれ $\mathcal{N}_Y(x), \mathrm{monad}_Y(x)$ とかくことにします。このとき、$X$ が $Y$ の部分位相空間であるとは、
\begin{equation} \tag{1}
\forall A \in \mathscr{P}(X) \, (A \in \mathcal{O}_X \leftrightarrow \exists B \in \mathcal{O}_Y \, (A = B \cap X))
\end{equation}
であることをいいます。
 これを超準モデルでの同値条件で表したものが次の定理です。

【定理1】位相空間 $X,Y$ が $X \subseteq Y$ のとき、$X$ が $Y$ の部分位相空間となることは、 \begin{equation} \tag{2} \forall x \in X \, (\mathrm{monad}_X(x) = \mathrm{monad}_Y(x) \cap {}^*X) \end{equation} が成り立つことと同値である。

(証明)$(1) \Leftrightarrow (2)$ を示せばよい。
$(1) \Rightarrow (2)$ : $(1)$ が成り立つとし、任意に $x \in X$ をとる。
 任意に $B \in \mathcal{N}_Y(x)$ をとると、$x \in B' \subseteq B$ となる $B' \in \mathcal{O}_Y$ がとれ、$A' = B' \cap X$ とすると $(1)$ より $A' \in \mathcal{O}_X$ で、$x \in A'$ だから
\begin{equation*}
\mathrm{monad}_X(x) \subseteq {}^*A' \subseteq {}^*B' \subseteq {}^*B
\end{equation*}
である。$B \in \mathcal{N}_Y(x)$ は任意だから $\mathrm{monad}_X(x) \subseteq \mathrm{monad}_Y(x)$ であり、また $\mathrm{monad}_X(x) \subseteq {}^*X$ は明らかだから $\mathrm{monad}_X(x) \subseteq \mathrm{monad}_Y(x) \cap {}^*X$ が得られる。
 逆に、任意に $A \in \mathcal{N}_X(x)$ をとると、$x \in A' \subseteq A$ となる $A' \in \mathcal{O}_X$ がとれ、$(1)$ よりある $B' \in \mathcal{O}_Y$ に対して $A' = B' \cap X$ となり、$x \in B'$ だから $\mathrm{monad}_Y(x) \subseteq {}^*B'$ より
\begin{equation*}
\mathrm{monad}_Y(x) \cap {}^*X \subseteq {}^*B' \cap {}^*X = {}^*A' \subseteq {}^*A
\end{equation*}
であり、$A \in \mathcal{N}_X(x)$ は任意だから $\mathrm{monad}_Y(x) \cap {}^*X \subseteq \mathrm{monad}_X(x)$ が得られる。
 以上より $\mathrm{monad}_X(x) = \mathrm{monad}_Y(x) \cap {}^*X$ であり、$(2)$ が示された。
$(2) \Rightarrow (1)$ : $(2)$ が成り立つとし、任意に $A \in \mathscr{P}(X)$ をとる。
 $A \in \mathcal{O}_X$ とする。$B' = A \cup (Y \setminus X)$ とおき、任意の $x \in A$ に対して $\mathrm{monad}_Y(x) \subseteq {}^*B'$ となることを示す。任意に $y \in \mathrm{monad}_Y(x)$ をとると、$y \in {}^*X$ ならば $(2)$ より
\begin{equation*}
y \in \mathrm{monad}_Y(x) \cap {}^*X = \mathrm{monad}_X(x) \subseteq {}^*A \subseteq {}^*B'
\end{equation*}
となるから $y \in {}^*B'$ である。$y \notin {}^*X$ ならば
\begin{equation*}
y \in {}^*Y \setminus {}^*X = {}^*(Y \setminus X) \subseteq {}^*B'
\end{equation*}
よりやはり $y \in {}^*B'$ である。これで $\mathrm{monad}_Y(x) \subseteq {}^*B'$ が示されたから $B' \in \mathcal{N}_Y(x)$ であり、$x \in B(x) \subseteq B'$ をみたす $B(x) \in \mathcal{O}_Y$ が存在する。$B = \bigcup_{x \in A}B(x)$ とおくと $B \in \mathcal{O}_Y$ かつ $B \subseteq B'$ で、明らかに $A \subseteq B \cap X$ であり、また $B \cap X \subseteq B' \cap X = A$ だから $A = B \cap X$ である。
 逆に、ある $B \in \mathcal{O}_Y$ に対して $A = B \cap X$ ならば、任意の $x \in A$ に対して、$\mathrm{monad}_Y(x) \subseteq {}^*B$ と $(2)$ より
\begin{equation*}
\mathrm{monad}_X(x) = \mathrm{monad}_Y(x) \cap {}^*X \subseteq {}^*B \cap {}^*X = {}^*A
\end{equation*}
が得られるから、$A \in \mathcal{O}_X$ である。
 以上より $A \in \mathcal{O}_X \leftrightarrow \exists B \in \mathcal{O}_Y \, (A = B \cap X)$ であり、$(1)$ が示された。□

 さて、超準モデルを使って位相空間 $X$ を $X \subsetneq Y$ となる $Y$ に拡張する一つの方法を、次の補題によって示します。

【補題2】位相空間 $X$ と $X \subsetneq Y$ となる $Y$ があり、任意の $x \in Y \setminus X$ に対して $x \in \nu(x)$ をみたす $\nu(x) \in \mathscr{P}({}^*X)$ が定まっているとする。このとき任意の $x \in X$ に対して $\nu(x) = \mathrm{monad}_X(x)$ と定め、 \begin{equation*} \mathcal{O}_Y = \{ \, A \in \mathscr{P}(Y) \, \mid \, \forall x \in A \, (\nu(x) \subseteq {}^*A) \, \} \end{equation*} で定まる開集合系 $\mathcal{O}_Y$ によって $Y$ に位相を定めると、 \begin{equation} \tag{3} \forall x \in X \, (\mathrm{monad}_X(x) = \mathrm{monad}_Y(x)) \end{equation} であり、従って【定理1】より $X$ は $Y$ の部分位相空間となる。

(証明)
 任意に $x \in X$ をとる。まず、$\mathrm{monad}_X(x) = \nu(x) \subseteq \mathrm{monad}_Y(x)$ である。逆の包含関係を示すため、任意に $A \in \mathcal{N}_X(x)$ をとると、$x \in B \subseteq A$ となる $B \in \mathcal{O}_X$ が存在し、$\forall y \in B \, (\nu(y) = \mathrm{monad}_X(y) \subseteq {}^*B)$ より $B \in \mathcal{O}_Y$ となるから $A \in \mathcal{N}_Y(x)$ であり、これより $\mathrm{monad}_Y(x) \subseteq {}^*A$ である。$A \in \mathcal{N}_X(x)$ は任意だから $\mathrm{monad}_Y(x) \subseteq \mathrm{monad}_X(x)$ が得られる。以上で $(3)$ が示された。□

 この補題の方法は、本来は $(2)$ でよいのにそれより強い $(3)$ が得られることから、位相空間の拡張手段としてはかなり「雑」といえます。しかし次に示す目的のためには、この方法で十分です。

2. アレクサンドロフの1点コンパクト化

 ここまでの考察を利用して、「アレクサンドロフの1点コンパクト化」を超準モデルを用いて構成します。
 位相空間 $X$ に対し、$X$ に属さない1点 $\infty$ を $X$ に追加した空間 $Y = X \cup \{ \infty \}$ を考え、次によって $\nu(\infty)$ を定めます。
\begin{equation*}
\nu(\infty) = \{ \, y \in {}^*X \, \mid \, \forall x \in X \, (y \notin \mathrm{monad}_X(x)) \, \} \cup \{ \infty \}
\end{equation*}
つまり「 ${}^*X$ のすべての遠標準点と $\infty$ を集めた集合」を $\nu(\infty)$ と定めます。
 これを用いて【補題2】の方法で $X$ を部分位相空間とする $Y$ の位相が定まります。$(3)$ が成立するので、以下 $\mathrm{monad}$ の添字は省略します。
 このとき、まず $Y$ はコンパクトです。なぜなら任意に $y \in {}^*Y$ をとると、$y$ はある $x \in X$ に対して $y \in \mathrm{monad}(x)$ となるか、または $y \in \nu(\infty)$ となるかのどちらかで、後者ならば $y \in \nu(\infty) \subseteq \mathrm{monad}(\infty)$ なので、第17回【定理5】より $Y$ はコンパクトになります。
 次に、$X$ がコンパクトでない場合、$X$ は $Y$ において稠密となります。なぜなら $X$ がコンパクトでなければ ${}^*X$ は遠標準点をもつから $\nu(\infty) \cap {}^*X \neq \emptyset$ であり、従って $\mathrm{monad}(\infty) \cap {}^*X \neq \emptyset$ より $\forall x \in Y \, ( \mathrm{monad}(x) \cap {}^*X \neq \emptyset )$ となるから、第17回【定理3】の ix) より $X$ は $Y$ において稠密です。
 これらの条件をみたす $Y = X \cup \{ \infty \}$ を $X$ のアレクサンドロフの1点コンパクト化といいます。従って上の方法は、任意のコンパクトでない位相空間から1点コンパクト化を構成する(超準モデルを使った)一つの方法を示しています。
 さらに次が成り立ちます。

【補題3】$X$ がハウスドルフかつ局所コンパクト(任意の点に対してコンパクトな近傍が存在する)ならば、上の方法で構成した1点コンパクト化において、 \begin{equation*} \mathrm{monad}(\infty) = \nu(\infty) \end{equation*} が成立する。

(証明)
 $\mathrm{monad}(\infty) \supseteq \nu(\infty)$ は既に証明済み。$\mathrm{monad}(\infty) \subseteq \nu(\infty)$ を示すため、ある $ y \in \mathrm{monad}(\infty) \setminus \nu(\infty)$ が存在すると仮定して矛盾を導く。$y \notin \nu(\infty)$ なので、$\nu(\infty)$ の定義より、ある $x \in X$ に対して $y \in \mathrm{monad}(x)$ である。$X$ は局所コンパクトだから $A \in \mathcal{N}_X(x)$ となるコンパクトな $A$ が存在して $y \in \mathrm{monad}(x) \subseteq {}^*A$ より $y \in {}^*A$ となる。$X$ はハウスドルフだから第17回【定理6】 ii) より $A$ は $X$ の閉集合で、従って $X \setminus A$ は $X$ の開集合である。そこで $B = (X \setminus A) \cup \{ \infty \}$ とすると $B = Y \setminus A$ で、任意の $z \in X \setminus A$ に対して $\nu(z) = \mathrm{monad}(z) \subseteq {}^*(X \setminus A) \subseteq {}^*B$ である。また $A$ がコンパクトだから第17回【定理5】より ${}^*A$ の点は全て ${}^*X$ の近標準点で、$\nu(\infty)$ は ${}^*X$ の遠標準点と $\infty$ の集合だから $\nu(\infty) \cap {}^*A = \emptyset$ であり、これより $\nu(\infty) \subseteq {}^*Y \setminus {}^*A = {}^*(Y \setminus A) = {}^*B$ となる。従って $B$ は $Y$ における開集合であるから $\infty$ の近傍であり、 $y \in \mathrm{monad}(\infty) \subseteq {}^*B = {}^*Y \setminus {}^*A$ となるから $y \in {}^*A$ と矛盾する。以上より $\mathrm{monad}(\infty) \subseteq \nu(\infty)$ が得られたから $\mathrm{monad}(\infty) = \nu(\infty)$ である。□

 この補題を使って、次の有名な結果が示されます。

【定理4】$X$ がハウスドルフかつ局所コンパクトのとき、上の方法で構成した1点コンパクト化はハウスドルフである。

(証明)
 $X$ がハウスドルフであることと第17回【定理4】 ii) より、任意の $x, y \in X$ に対して $x \neq y \to \mathrm{monad}(x) \cap \mathrm{monad}(y) = \emptyset$ である。さらに【補題3】より $\mathrm{monad}(x) \cap \mathrm{monad}(\infty) = \mathrm{monad}(x) \cap \nu(\infty) = \emptyset$ も明らかなので、任意の $x, y \in Y$ に対して $x \neq y \to \mathrm{monad}(x) \cap \mathrm{monad}(y) = \emptyset$ が成り立ち、従って再び第17回【定理4】 ii) より $Y$ もハウスドルフである。□

 ついでに、この定理の逆も超準モデルを利用して示しておきましょう。そのために必要になるのが次の補題です。

【補題5】位相空間 $X$ が $Y = X \cup \{ \infty \} \ ( \infty \notin X )$ の部分位相空間であり、かつ $Y$ が $\mathrm{T}_1$ ならば、次が成立する。 \begin{equation} \tag{4} \forall x \in X \, (\mathrm{monad}_X(x) = \mathrm{monad}_Y(x)) \end{equation}

(証明)
 【定理1】より任意の $x \in X$ に対して
\begin{equation*}
\mathrm{monad}_X(x) = \mathrm{monad}_Y(x) \cap {}^*X
\end{equation*}
が成立する。$Y$ が $\mathrm{T}_1$ だから第17回【定理4】 i) より $\infty \notin \mathrm{monad}_Y(x)$ であり、かつ ${}^*Y = {}^*X \cup \{ \infty \}$ だから $\mathrm{monad}_Y(x) \subseteq {}^*X$ すなわち $\mathrm{monad}_Y(x) \cap {}^*X = \mathrm{monad}_Y(x)$ である。従って $(4)$ が成立する。□

 この補題を使って、【定理4】の逆が次のように示されます。

【定理6】$X$ の1点コンパクト化 $Y$ がハウスドルフならば、$X$ はハウスドルフかつ局所コンパクトである。

(証明)
 $Y$ はハウスドルフだから $\mathrm{T}_1$ であり、【補題5】より $(4)$ が成立する。従って $Y$ のハウスドルフ性と第17回【定理4】 ii) より $X$ もハウスドルフである。任意に $x \in X$ をとると、$Y$ がハウスドルフだから $Y$ における $x$ の開近傍 $A$ と $\infty$ の開近傍 $B$ で $A \cap B = \emptyset$ となるものがとれる。$C = Y \setminus B$ とすると、$C$ はコンパクト空間 $Y$ の閉集合だから、第17回【定理6】 i) より $Y$ においてコンパクトである。従って第17回【定理5】より、
\begin{equation*}
\forall y \in {}^*C \, \exists z \in C \, (y \in \mathrm{monad}_Y(z))
\end{equation*}
が成立するが、$\infty \notin C$ より $C \subseteq X$ であり、これと $(4)$ より
\begin{equation*}
\forall y \in {}^*C \, \exists z \in C \, (y \in \mathrm{monad}_X(z))
\end{equation*}
が成立し、第17回【定理5】より $C$ は $X$ においてもコンパクトである。$A \subseteq C$ だから $C$ は $x$ のコンパクトな近傍であり、$x \in X$ は任意だから $X$ は局所コンパクトである。□

 以上でアレクサンドロフの1点コンパクト化に関する諸定理が、超準モデルを使って証明されました。通常の方法に比べて特に簡単になるとは言えませんが、ハウスドルフ性やコンパクト性とモナドとの関係を見通しよく利用することができて、面白い方法だと思います。

(続く)(前記事)(目次)


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