冬の東吉野村を奈良交通とコミュニティバスで通り抜ける [バス]
激動の2022年の最後の乗りバス記事です。
年末の仕事納めの翌日が平日だったので、平日にしか走らない路線に乗りたくなり、奈良県の東吉野村に行ってきました。
ルートはこちら。
(東吉野村役場付近で1ヶ所途切れているのは、単に記録を忘れていたからです。)
吉野郡東吉野村は、平日のみ奈良交通バスが榛原駅から東吉野村役場まで走っていますが、土休日は途中の菟田野止まりになるので、東吉野村コミュニティバスでしかアクセスできません(それも休日は予約制になります)。
さらに、東吉野村から同じ吉野郡の吉野町へは、平日はコミュニティバスが新子まで走りますが、それも土休日は走らないので、平日にしかバスで吉野町へ抜けることができません。
今回は平日の年末休みを利用して、榛原から東吉野村を通って吉野町の大和上市まで通り抜けてきました。
榛原駅で東吉野村役場行に乗ります。時刻表の土休日欄には「運行はありません」と虚しく書かれています。
木津川水系の芳野川沿いに、県道を旧菟田野町に向けて南下していきます。
国道166号に入り、菟田野の中心地を抜けると、雪の残る風景になってきました。
峠を越えて東吉野村に入ると、道の駅「ひよしのさとマルシェ」に着きます。バスはこの先役場まで行きますが、昼食をとるためにここで下車します。
吉野本葛入りの太素麺「たあめん」を食べました。ツルッとしたうどんのような食感です。
ここは東吉野村コミュニティバスの路線結節点になっていて、各方面へのバスが集まってきます。
役場行きのバスに乗りました。
今度は吉野川水系の鷲家川に沿って走り、10分ほどで着きます。
運転席との間には感染防止対策シートがあるので、前面展望は良くないですが、仕方ありません。
役場もマルシェと同様に、奈良交通とコミュニティバスの乗換地点になっています。
国道から離れているので周辺はとても静かで、落ち着いた佇まいの集落が広がっています。地区内には小さな商店や南都銀行はありますが、コンビニやスーパーはありません。
ここからは平日にしか走らない新子(あたらし)行に乗って、吉野町へ向かいます。
吉野川の支流高見川に沿って走り、こちらも10分ほどで着きます。
新子からは吉野町内になるので、吉野町のコミュニティバス路線がありますが、今年の4月からダイヤが変わって、国道169号線沿いの路線以外は午前中にしか走らなくなりました。そのかわり予約制の乗合デマンドバスが運行されるようになり、町民以外も500円で利用できます(町民は200円)。新子からそれを使うことも考えましたが、なんだか単なる安いタクシーみたいな気もするので、今回は新子から国道169号線まで歩くことにしました。
このあたりも風情のある集落です。南都銀行の支店がこんな所にもあるのは少々驚きました(後で調べたら支店ではなくATMだけでした)。
吉野川が国道を離れて蛇行する区間の川沿いを4kmほど歩きます。天気が良いのでそれほど寒くなく快適なウォーキングでした。
国道169号線の樫尾のバス停に着きました。ここでは大和上市駅と川上村とを結ぶ「やまぶきバス」、それとはるばる奈良県の南の端の下北山村とを結ぶ「ゆうゆうバス」(どちらもコミュニティバス)が利用できます。今回はやまぶきバスに乗ります。
標柱にはスマイルバスと書かれていますが、今年4月からスマイルバスは樫尾は通っていません。
ゆうゆうバスの長い長い時刻表。いつかこれにも乗って熊野までバス乗り継ぎで抜けてみたいものです。
バスの時間まで間があるので、この付近の唯一の飲食店である焼肉屋で焼肉丼を食べて時間を潰しました。冬の乗りバスは待ち時間にどこで暖を取って過ごすかの計画も必要です。
やまぶきバスに乗って大和上市駅へ向かう頃にはすっかり暗くなりました。
近鉄の吉野川鉄橋が見えると、大和上市駅です。
この駅はかつては吉野郡東部地域の奈良交通バスの拠点だったのですが、いまや奈良交通の路線はほとんどなく、コミュニティバスばかりになりました。今年4月からは大台ヶ原行の路線も通らなくなってしまい(八木駅、橿原神宮前駅発着に変更)、寂しい限りです。
2両編成の近鉄特急で帰ります。
今回訪れた東吉野村も吉野町も、かつては奈良交通の路線がくまなく走っていた地域でしたが、コミュニティバス化は時代の流れで仕方がありません。運賃が安くなったメリットはありますが、自治体の方針によって、土休日の運行がなくなったりデマンドバス(タクシー)化などされたり、部外者が公共交通で訪問するには難しくなった面もあります。これからも各地をコミュニティバスを利用して訪れる場合は、事前によく調べた上で、できるだけ平日に休みを取って訪れたいと思います。
「路線バス歩き」のすすめ(目次)へ
年末の仕事納めの翌日が平日だったので、平日にしか走らない路線に乗りたくなり、奈良県の東吉野村に行ってきました。
ルートはこちら。
(東吉野村役場付近で1ヶ所途切れているのは、単に記録を忘れていたからです。)
吉野郡東吉野村は、平日のみ奈良交通バスが榛原駅から東吉野村役場まで走っていますが、土休日は途中の菟田野止まりになるので、東吉野村コミュニティバスでしかアクセスできません(それも休日は予約制になります)。
さらに、東吉野村から同じ吉野郡の吉野町へは、平日はコミュニティバスが新子まで走りますが、それも土休日は走らないので、平日にしかバスで吉野町へ抜けることができません。
今回は平日の年末休みを利用して、榛原から東吉野村を通って吉野町の大和上市まで通り抜けてきました。
榛原駅で東吉野村役場行に乗ります。時刻表の土休日欄には「運行はありません」と虚しく書かれています。
木津川水系の芳野川沿いに、県道を旧菟田野町に向けて南下していきます。
国道166号に入り、菟田野の中心地を抜けると、雪の残る風景になってきました。
峠を越えて東吉野村に入ると、道の駅「ひよしのさとマルシェ」に着きます。バスはこの先役場まで行きますが、昼食をとるためにここで下車します。
吉野本葛入りの太素麺「たあめん」を食べました。ツルッとしたうどんのような食感です。
ここは東吉野村コミュニティバスの路線結節点になっていて、各方面へのバスが集まってきます。
役場行きのバスに乗りました。
今度は吉野川水系の鷲家川に沿って走り、10分ほどで着きます。
運転席との間には感染防止対策シートがあるので、前面展望は良くないですが、仕方ありません。
役場もマルシェと同様に、奈良交通とコミュニティバスの乗換地点になっています。
国道から離れているので周辺はとても静かで、落ち着いた佇まいの集落が広がっています。地区内には小さな商店や南都銀行はありますが、コンビニやスーパーはありません。
ここからは平日にしか走らない新子(あたらし)行に乗って、吉野町へ向かいます。
吉野川の支流高見川に沿って走り、こちらも10分ほどで着きます。
新子からは吉野町内になるので、吉野町のコミュニティバス路線がありますが、今年の4月からダイヤが変わって、国道169号線沿いの路線以外は午前中にしか走らなくなりました。そのかわり予約制の乗合デマンドバスが運行されるようになり、町民以外も500円で利用できます(町民は200円)。新子からそれを使うことも考えましたが、なんだか単なる安いタクシーみたいな気もするので、今回は新子から国道169号線まで歩くことにしました。
このあたりも風情のある集落です。南都銀行の支店がこんな所にもあるのは少々驚きました(後で調べたら支店ではなくATMだけでした)。
吉野川が国道を離れて蛇行する区間の川沿いを4kmほど歩きます。天気が良いのでそれほど寒くなく快適なウォーキングでした。
国道169号線の樫尾のバス停に着きました。ここでは大和上市駅と川上村とを結ぶ「やまぶきバス」、それとはるばる奈良県の南の端の下北山村とを結ぶ「ゆうゆうバス」(どちらもコミュニティバス)が利用できます。今回はやまぶきバスに乗ります。
標柱にはスマイルバスと書かれていますが、今年4月からスマイルバスは樫尾は通っていません。
ゆうゆうバスの長い長い時刻表。いつかこれにも乗って熊野までバス乗り継ぎで抜けてみたいものです。
バスの時間まで間があるので、この付近の唯一の飲食店である焼肉屋で焼肉丼を食べて時間を潰しました。冬の乗りバスは待ち時間にどこで暖を取って過ごすかの計画も必要です。
やまぶきバスに乗って大和上市駅へ向かう頃にはすっかり暗くなりました。
近鉄の吉野川鉄橋が見えると、大和上市駅です。
この駅はかつては吉野郡東部地域の奈良交通バスの拠点だったのですが、いまや奈良交通の路線はほとんどなく、コミュニティバスばかりになりました。今年4月からは大台ヶ原行の路線も通らなくなってしまい(八木駅、橿原神宮前駅発着に変更)、寂しい限りです。
2両編成の近鉄特急で帰ります。
今回訪れた東吉野村も吉野町も、かつては奈良交通の路線がくまなく走っていた地域でしたが、コミュニティバス化は時代の流れで仕方がありません。運賃が安くなったメリットはありますが、自治体の方針によって、土休日の運行がなくなったりデマンドバス(タクシー)化などされたり、部外者が公共交通で訪問するには難しくなった面もあります。これからも各地をコミュニティバスを利用して訪れる場合は、事前によく調べた上で、できるだけ平日に休みを取って訪れたいと思います。
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シュトルツ・チェザロの定理の超準解析による証明 [数学]
久々に超準解析で証明問題をやってみました。
お題として「シュトルツ・チェザロの定理」です。
なんか見たことあるような雰囲気の定理ですが、これはあれです。「差分の比が収束すれば元の比も同じ値に収束する」という主張なので、差分を微分に変えたら有名なロピタルの定理になりますね。
また、$b_n = n, a_0 = 0$ としたら、これも有名な「実数列が収束すればそのチェザロ平均も同じ値に収束する」という定理にもなります。
では、証明していきましょう。以前の記事「チェザロ平均の収束の超準解析での証明例」のやり方に倣って進めます。
(証明)
実数列 $\{ a_n \}, \{ b_n \}$ を、超自然数を番号とする超実数列に拡大しておく。
任意の $m,n \in {}^*\mathbb{N}, m < n$ について、次が成り立つ。
\begin{eqnarray*}
a_n - a_m &=& \sum_{k=m}^{n-1}( a_{k+1} - a_k ) \\
&=& \sum_{k=m}^{n-1}( b_{k+1} - b_k ) \frac{ a_{k+1} - a_k }{ b_{k+1} - b_k }
\end{eqnarray*}
この全体を $b_n$ で割って両辺から $c$ を引くと、次の変形ができる。
\begin{eqnarray*}
\frac{ a_n }{ b_n } - c &=& \frac{ a_m }{ b_n } + \frac{1}{ b_n } \sum_{k=m}^{n-1}( b_{k+1} - b_k ) \frac{ a_{k+1} - a_k }{ b_{k+1} - b_k } - c \\
&=& \frac{ a_m }{ b_n } + \frac{1}{ b_n } \sum_{k=m}^{n-1}( b_{k+1} - b_k )( \frac{ a_{k+1} - a_k }{ b_{k+1} - b_k } - c ) + \frac{1}{ b_n } \sum_{k=m}^{n-1}( b_{k+1} - b_k ) c - c \\
&=& \frac{ a_m }{ b_n } + \frac{1}{ b_n } \sum_{k=m}^{n-1}( b_{k+1} - b_k )( \frac{ a_{k+1} - a_k }{ b_{k+1} - b_k } - c ) + \frac{1}{ b_n }( b_n - b_m ) c - c \\
&=& \frac{ a_m - b_m c }{ b_n } + \frac{1}{ b_n } \sum_{k=m}^{n-1}( b_{k+1} - b_k )( \frac{ a_{k+1} - a_k }{ b_{k+1} - b_k } - c )
\end{eqnarray*}
ここで、無限大超自然数 $n$ を任意にとる。$\displaystyle \lim_{n \to \infty} b_n = +\infty$ だから、この $n$ に対する $b_n$ は正の無限大超実数であり、従って $\sqrt{ b_n }$ も正の無限大超実数である。任意の自然数 $m$ に対して $a_m - b_m c$ は実数だから $\left| a_m - b_m c \right| < \sqrt{ b_n }$ であり、従って $m$ を十分小さな無限大超自然数にとると $\left| a_m - b_m c \right| < \sqrt{ b_n }$ とできる。この $m,n$ に対して、
\[ \mu = \max_{m \le k \le n-1} \left| \frac{ a_{k+1} - a_k }{ b_{k+1} - b_k } - c \right| \]
が存在し、
\[ \lim_{n \to \infty} \frac{a_{n+1} - a_n}{b_{n+1} - b_n} = c \]
より $\mu \approx 0$(無限小超実数)である。これらと $\{ b_n \}$ が狭義単調増加であることより、
\begin{eqnarray*}
\left| \frac{ a_n }{ b_n } - c \right| &\le& \frac{ \left| a_m - b_m c \right| }{ b_n } + \frac{1}{ b_n } \sum_{k=m}^{n-1}( b_{k+1} - b_k ) \left| \frac{ a_{k+1} - a_k }{ b_{k+1} - b_k } - c \right| \\
&<& \frac{\sqrt{ b_n }}{ b_n } + \frac{1}{ b_n } \sum_{k=m}^{n-1}( b_{k+1} - b_k ) \mu \\
&=& \frac{1}{\sqrt{ b_n }} + \frac{1}{ b_n } ( b_n - b_m ) \mu \\
&<& \frac{1}{\sqrt{ b_n }} + \mu \\
&\approx& 0
\end{eqnarray*}
従って、任意の無限大超自然数 $n$ に対して $\displaystyle \frac{a_n}{b_n} \approx c$ が成り立つから、$\displaystyle \lim_{n \to \infty} \frac{a_n}{b_n} = c$ である。□
どうでしょうか。普通の証明に比べて簡単になっているわけでもなさそうですが、やはり無限大や無限小を数として式変形して証明できるところは面白いかもしれません。
念のため、上の証明中に使った超準解析の基本的な補題を証明しておきましょう。
(証明)
$\{ a_n \}$ を超自然数を番号とする超実数列に拡大しておく。$K$ を任意の正の実数とし、$A_K = \{ \, k \in \mathbb{N} \, \mid \, \left| a_k \right| \ge K \, \}$ とおくと、自然数の性質より $A_K$ は空でなければ最小元をもつ。すなわち、
\[ \forall K \in \mathbb{R} \, ( K > 0 \land A_K \neq \emptyset \to \exists m \in \mathbb{N} \, ( m = \min A_K ) ) \]
移行原理より、
\[ \forall K \in {}^*\mathbb{R} \, ( K > 0 \land {}^*A_K \neq \emptyset \to \exists m \in {}^*\mathbb{N} \, ( m = \min {}^*A_K ) ) \]
ここで ${}^*A_K = \{ \, k \in {}^*\mathbb{N} \, \mid \, \left| a_k \right| \ge K \, \}$ であるから、これを $B_K$ とおく。
そこで、正の超実数 $M$ が任意の自然数 $k$ に対して $\left| a_k \right| < M$ であるとする。$B_M = \emptyset$ ならば、任意の無限大超自然数 $n$ に対して明らかに$(1)$は成立する。$B_M \neq \emptyset$ ならば、$m = \min B_M$ となる超自然数 $m$ が存在し、任意の自然数 $k$ に対して $k \notin B_M$ だから $m$ は無限大超自然数である。$n = m - 1$ とすると $n$ も無限大超自然数で、この $n$ に対し$(1)$が成立する。□
お題として「シュトルツ・チェザロの定理」です。
【定理】実数列 $\{ a_n \}, \{ b_n \}$ について、$\{ b_n \}$ は狭義単調増加で非有界、かつ極限
\[ \lim_{n \to \infty} \frac{a_{n+1} - a_n}{b_{n+1} - b_n} = c \]
が存在すれば、
\[ \lim_{n \to \infty} \frac{a_n}{b_n} = c \]
である。
なんか見たことあるような雰囲気の定理ですが、これはあれです。「差分の比が収束すれば元の比も同じ値に収束する」という主張なので、差分を微分に変えたら有名なロピタルの定理になりますね。
また、$b_n = n, a_0 = 0$ としたら、これも有名な「実数列が収束すればそのチェザロ平均も同じ値に収束する」という定理にもなります。
では、証明していきましょう。以前の記事「チェザロ平均の収束の超準解析での証明例」のやり方に倣って進めます。
(証明)
実数列 $\{ a_n \}, \{ b_n \}$ を、超自然数を番号とする超実数列に拡大しておく。
任意の $m,n \in {}^*\mathbb{N}, m < n$ について、次が成り立つ。
\begin{eqnarray*}
a_n - a_m &=& \sum_{k=m}^{n-1}( a_{k+1} - a_k ) \\
&=& \sum_{k=m}^{n-1}( b_{k+1} - b_k ) \frac{ a_{k+1} - a_k }{ b_{k+1} - b_k }
\end{eqnarray*}
この全体を $b_n$ で割って両辺から $c$ を引くと、次の変形ができる。
\begin{eqnarray*}
\frac{ a_n }{ b_n } - c &=& \frac{ a_m }{ b_n } + \frac{1}{ b_n } \sum_{k=m}^{n-1}( b_{k+1} - b_k ) \frac{ a_{k+1} - a_k }{ b_{k+1} - b_k } - c \\
&=& \frac{ a_m }{ b_n } + \frac{1}{ b_n } \sum_{k=m}^{n-1}( b_{k+1} - b_k )( \frac{ a_{k+1} - a_k }{ b_{k+1} - b_k } - c ) + \frac{1}{ b_n } \sum_{k=m}^{n-1}( b_{k+1} - b_k ) c - c \\
&=& \frac{ a_m }{ b_n } + \frac{1}{ b_n } \sum_{k=m}^{n-1}( b_{k+1} - b_k )( \frac{ a_{k+1} - a_k }{ b_{k+1} - b_k } - c ) + \frac{1}{ b_n }( b_n - b_m ) c - c \\
&=& \frac{ a_m - b_m c }{ b_n } + \frac{1}{ b_n } \sum_{k=m}^{n-1}( b_{k+1} - b_k )( \frac{ a_{k+1} - a_k }{ b_{k+1} - b_k } - c )
\end{eqnarray*}
ここで、無限大超自然数 $n$ を任意にとる。$\displaystyle \lim_{n \to \infty} b_n = +\infty$ だから、この $n$ に対する $b_n$ は正の無限大超実数であり、従って $\sqrt{ b_n }$ も正の無限大超実数である。任意の自然数 $m$ に対して $a_m - b_m c$ は実数だから $\left| a_m - b_m c \right| < \sqrt{ b_n }$ であり、従って $m$ を十分小さな無限大超自然数にとると $\left| a_m - b_m c \right| < \sqrt{ b_n }$ とできる。この $m,n$ に対して、
\[ \mu = \max_{m \le k \le n-1} \left| \frac{ a_{k+1} - a_k }{ b_{k+1} - b_k } - c \right| \]
が存在し、
\[ \lim_{n \to \infty} \frac{a_{n+1} - a_n}{b_{n+1} - b_n} = c \]
より $\mu \approx 0$(無限小超実数)である。これらと $\{ b_n \}$ が狭義単調増加であることより、
\begin{eqnarray*}
\left| \frac{ a_n }{ b_n } - c \right| &\le& \frac{ \left| a_m - b_m c \right| }{ b_n } + \frac{1}{ b_n } \sum_{k=m}^{n-1}( b_{k+1} - b_k ) \left| \frac{ a_{k+1} - a_k }{ b_{k+1} - b_k } - c \right| \\
&<& \frac{\sqrt{ b_n }}{ b_n } + \frac{1}{ b_n } \sum_{k=m}^{n-1}( b_{k+1} - b_k ) \mu \\
&=& \frac{1}{\sqrt{ b_n }} + \frac{1}{ b_n } ( b_n - b_m ) \mu \\
&<& \frac{1}{\sqrt{ b_n }} + \mu \\
&\approx& 0
\end{eqnarray*}
従って、任意の無限大超自然数 $n$ に対して $\displaystyle \frac{a_n}{b_n} \approx c$ が成り立つから、$\displaystyle \lim_{n \to \infty} \frac{a_n}{b_n} = c$ である。□
どうでしょうか。普通の証明に比べて簡単になっているわけでもなさそうですが、やはり無限大や無限小を数として式変形して証明できるところは面白いかもしれません。
念のため、上の証明中に使った超準解析の基本的な補題を証明しておきましょう。
【補題】実数列 $\{ a_n \}$ と正の超実数 $M$ について、任意の自然数 $k$ に対して $\left| a_k \right| < M$ ならば、ある無限大超自然数 $n$ が存在して、$\{ a_n \}$ を拡大した超実数列において、
\[ \forall k \in {}^*\mathbb{N} \, ( k \le n \to \left| a_k \right| < M ) \tag{1} \]
とすることができる。
(証明)
$\{ a_n \}$ を超自然数を番号とする超実数列に拡大しておく。$K$ を任意の正の実数とし、$A_K = \{ \, k \in \mathbb{N} \, \mid \, \left| a_k \right| \ge K \, \}$ とおくと、自然数の性質より $A_K$ は空でなければ最小元をもつ。すなわち、
\[ \forall K \in \mathbb{R} \, ( K > 0 \land A_K \neq \emptyset \to \exists m \in \mathbb{N} \, ( m = \min A_K ) ) \]
移行原理より、
\[ \forall K \in {}^*\mathbb{R} \, ( K > 0 \land {}^*A_K \neq \emptyset \to \exists m \in {}^*\mathbb{N} \, ( m = \min {}^*A_K ) ) \]
ここで ${}^*A_K = \{ \, k \in {}^*\mathbb{N} \, \mid \, \left| a_k \right| \ge K \, \}$ であるから、これを $B_K$ とおく。
そこで、正の超実数 $M$ が任意の自然数 $k$ に対して $\left| a_k \right| < M$ であるとする。$B_M = \emptyset$ ならば、任意の無限大超自然数 $n$ に対して明らかに$(1)$は成立する。$B_M \neq \emptyset$ ならば、$m = \min B_M$ となる超自然数 $m$ が存在し、任意の自然数 $k$ に対して $k \notin B_M$ だから $m$ は無限大超自然数である。$n = m - 1$ とすると $n$ も無限大超自然数で、この $n$ に対し$(1)$が成立する。□