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わかってない奴がわかったつもりで書き留める超準解析(その9) [数学]

【超準解析について生半可な知識しかない僕が、わかったつもりの内容をちょっとずつ書き留めていきます。不正確な内容や誤りもあることをご承知ください。】

(9) 距離空間上の関数列

 今回も舞台は距離空間ですが、今回は2つの距離空間 $\langle X,d_X \rangle$ と $\langle Y,d_Y \rangle$ を考えます($d_X,d_Y$ はそれぞれの距離関数)。これらに対して超準モデル $\langle {}^*X,{}^*d_X \rangle$ と $\langle {}^*Y,{}^*d_Y \rangle$ を考えることができます。第3回の連続性に関する結果や第5回の数列の極限に関する結果はそのまま距離空間へ一般化できますので、それらは自由に使うこととします。
 $A \subseteq X$ とし、$A$から$Y$への関数の列 $\{ f_n \}$ を考えます。これは細かく書くと $\mathbb{N} \times A$ から$Y$への2変数関数$f$を考えたうえで、$n \in \mathbb{N}$ と $x \in A$ に対して
\[ f_n(x) = f(n,x) \]
と定めることによって関数 $f_n : A \to Y$ の列を考えることになります。ここで$f$の超準拡大${}^*f$が ${}^*\mathbb{N} \times {}^*A$ から${}^*Y$への2変数関数として定まりますから、$n \in {}^*\mathbb{N}$ と $x \in {}^*A$ に対して
\[ {}^*f_n(x) = {}^*f(n,x) \]
と定めることによって関数 ${}^*f_n : {}^*A \to {}^*Y$ の列が定まり、このとき$n$は無限大超自然数の値をとることができます。

 この関数列 $\{ f_n \}$ と、それとは別の関数 $f_\infty : A \to Y$ を考えたとき、関数列の収束に関して次表に示す超準モデル上の同値条件が成立します。

距離空間上の概念 超準モデル上の同値条件
$\{ f_n \}$ が$f_\infty$に各点収束 $\forall n \in {}^*\mathbb{N}_\infty \, \forall x \in A \, ({}^*f_n(x) \approx {}^*f_\infty (x))$
$\{ f_n \}$ が$f_\infty$に一様収束 $\forall n \in {}^*\mathbb{N}_\infty \, \forall x \in {}^*A \, ({}^*f_n(x) \approx {}^*f_\infty (x))$
$\{ f_n \}$ のある部分列が$f_\infty$に一様収束 $\exists n \in {}^*\mathbb{N}_\infty \, \forall x \in {}^*A \, ({}^*f_n(x) \approx {}^*f_\infty (x))$


どうでしょうか。ほんまかいなという感じですね。特に各点収束と一様収束が$A$と${}^*A$の違いだけで表されてしまうところが注目に値するところです。順に確認してみましょう。

 まず各点収束については改めて証明することはありません。第5回【数列の極限の定義】をそのまま各 $x \in A$ に対して適用しただけです。この場合 $x \in {}^*A \setminus A$ については何も言っていないことに注意して下さい。

 一様収束についてはちょっと丁寧に証明してみましょう。$A$上で $\{ f_n \}$ が$f_\infty$に一様収束するとは($\epsilon - \delta$ 論法による定義で)
\[ \forall \epsilon \in \mathbb{R}^+ \, \exists L \in \mathbb{N} \, \forall n \in \mathbb{N} \, (n \ge L \to \forall x \in A \, (d_Y(f_n(x),f_\infty (x)) < \epsilon)) \]
が成り立つことをいうのでした。

【定理1】$A$上で $\{ f_n \}$ が$f_\infty$に一様収束することと、 \[ \forall n \in {}^*\mathbb{N}_\infty \, \forall x \in {}^*A \, ({}^*f_n(x) \approx {}^*f_\infty (x)) \tag{1} \] が成り立つことは同値である。

(証明)$\{f_n\}$ が$f_\infty$に一様収束すると仮定する。このとき任意の正実数$\epsilon$に対しある自然数$L$が存在して、
\[ \forall n \in \mathbb{N} \, (n \ge L \to \forall x \in A \, (d_Y(f_n(x),f_\infty (x)) < \epsilon)) \]
が成り立つ。移行原理より
\[ \forall n \in {}^*\mathbb{N} \, (n \ge L \to \forall x \in {}^*A \, ({}^*d_Y({}^*f_n(x),{}^*f_\infty (x)) < \epsilon)) \]
が成り立ち、これより
\[ \forall n \in {}^*\mathbb{N}_\infty \, \forall x \in {}^*A \, ({}^*d_Y({}^*f_n(x),{}^*f_\infty (x)) < \epsilon) \]
が任意の正実数$\epsilon$に対して成り立つから、$(1)$が成り立つ。
 逆に$(1)$が成り立つと仮定する。このとき任意の正実数$\epsilon$に対し、
\[ \exists L \in {}^*\mathbb{N} \, \forall n \in {}^*\mathbb{N} \, (n \ge L \to \forall x \in {}^*A \, ({}^*d_Y({}^*f_n(x),{}^*f_\infty (x)) < \epsilon)) \]
が成り立つ($L$を無限大にとればよい)。移行原理より
\[ \exists L \in \mathbb{N} \, \forall n \in \mathbb{N} \, (n \ge L \to \forall x \in A \, (d_Y(f_n(x),f_\infty (x)) < \epsilon)) \]
となり、正実数$\epsilon$は任意だから $\{f_n\}$ は$f_\infty$に一様収束する。□

これまで色々やってきた証明と同じ流れで証明できました。

 3行目の一様収束する部分列が存在する条件についても、第5回【定理1】と同様の方法で証明できますので、こちらは省略します。

 各点収束や一様収束が超準モデル上の簡単な同値条件で表されましたので、例えばディ二の定理が次のように証明できます。

【定理2】$A$はコンパクトとする。$A$上の実関数列 $\{f_n\}$ が$n$に伴い単調非減少または単調非増加で$f_\infty$に各点収束し、かつ各$f_n$および$f_\infty$が$A$上で連続ならば、$\{f_n\}$ の収束は一様収束である。

(証明)単調性の仮定より、
\[ \forall x \in A \, \forall m,n \in \mathbb{N} \, ( m < n \to \left| f_m(x) - f_\infty (x) \right| \ge \left| f_n(x) - f_\infty (x) \right| ) \]
であるから、移行原理より
\[ \forall x \in {}^*A \, \forall m,n \in {}^*\mathbb{N} \, ( m < n \to \left| {}^*f_m(x) - {}^*f_\infty (x) \right| \ge \left| {}^*f_n(x) - {}^*f_\infty (x) \right| ) \]
が成り立つ。任意に $n \in {}^*\mathbb{N}_\infty$ と $x \in {}^*A$ をとる。$A$はコンパクトだから、第8回【定理3】より $x \approx z$ をみたす $z \in A$ がとれる(つまり$x$は近標準点で $z=\mathrm{st}(x) \in A$ となる)。各点収束の仮定より、任意の正実数$\epsilon$に対してある $m \in \mathbb{N}$ が存在して $\left| f_m(z) - f_\infty (z) \right| < \epsilon$ をみたす。$f_m$と$f_\infty$はともに$z$で連続だから ${}^*f_m(x) \approx f_m(z) \land {}^*f_\infty (x) \approx f_\infty (z)$ となって、当然 $m < n$ だから、
\[ \left| {}^*f_n(x) - {}^*f_\infty (x) \right| \le \left| {}^*f_m(x) - {}^*f_\infty (x) \right| \le \left| {}^*f_m(x) - f_m(z) \right| + \left| f_m(z) - f_\infty (z) \right| + \left| {}^*f_\infty (x) - f_\infty (z) \right| < \epsilon \]
となり、正実数$\epsilon$は任意だから ${}^*f_n(x) \approx {}^*f_\infty (x)$ である。従って【定理1】より $\{f_n\}$ は$f_\infty$に一様収束する。□

 証明を図解すると次のようになるでしょうか。

20190803超準解析でやさしく解く関数列の定理(ブログ用修正).001.jpeg

(続く)(前記事)(目次)

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ディニの定理はロビンソンの補題を使うと εδ を完全に排除して証明できます。

ロビンソンの補題.x: *N→*R を内的超実数列とする。次は同値:
(1) 十分大きな任意の(有限)自然数 n に対して x_n は無限小;
(2) 十分小さな任意の無限大超自然数 n に対して x_n は無限小。

これの証明は overspill principle を {n∈*N | -1/n ≦ x ≦ 1/n} に適用することで得られます。

ディニの定理の純超準的証明.f_n が f_∞ に単調に各点収束すると仮定。x を *A の任意の点とする。コンパクト性の特徴付けより、x はある標準点 y∈A のモナドに入っている。連続性の特徴付けより、任意の自然数 n に対して *f_n(x) \approx f_n(y)。ロビンソンの補題より、ある無限大 U が存在して、任意の無限大 n≦U に対して *f_n(x) \approx *f_n(y) \approx f_∞(y)。(最後の \approx は各点収束性の特徴付けを使った。)単調性と移行原理より、任意の n>U に対して |*f_n(x) - *f_∞(x)| ≦ |*f_U(x) - *f_∞(x)| ≦ |*f_U(x) - *f_∞(x)| ≦ |*f_U(x) - *f_∞(y)| + |*f_∞(y) - f_∞(x)|。右辺第一項は 0 に無限に近い。f_∞ は連続だから第二項も 0 に無限に近い。したがって *f_n(x) \approx *f_∞(x) となる。任意の無限大 n で \approx が成立するので、定理1より f_n は f_∞ に一様収束する。□
by お名前(必須) (2019-04-17 20:43) 

ロイロット博士

ありがとうございます。デービスの「超準解析」を参考に私なりにアレンジした証明を書いたのですが、εδ が残るのが確かに気になっておりました。εδ を完全に排除した証明の方が気持ち良いですね。
by ロイロット博士 (2019-04-21 13:57) 

お名前(必須)

申し訳ありません。ロビンソンの補題の主張に間違いでがあります。(1)⇒(2) は成立しますが、逆は成立しません。x_n = 1/n が反例になっています。ただし前述の証明は (1)⇒(2) があれば大丈夫です。

飽和性を使わずに(無限小の存在だけを使って)証明しようとすると εδ が排除できないことが結構ありますね。例えば、「連続関数の一様収束極限は連続」という定理がありますが、これを飽和性なしで証明しようとすると εδ が出てきてしまいます。デービスのテキスト(原著)だと Chapter 3 の Theorem 6.2 に応ります。彼は "Infinitesimal Prolongation Theorem"(Theorem 6.2, Chapter 2)を使って εδ を回避していますが、これはロビンソンの補題の弱い形です。

ディニの定理は Theorem 6.3 ですね。彼の証明に εδ が必要ないのは、実数体 R に固有の性質をフルに使っているからです。標準的な n∈N に対して f_n(q) は有限。単調性より無限大の ν∈*N-N に対しても *f_ν(q) は有限。「有限なら近標準」だから *f_ν(q) は近標準、等々。「有限なら近標準」は R に固有の性質です。例えば有理数体 Q では成立しません。

それと比べて、この記事の証明は R に固有の性質をあまり使っていません。(デイビスの証明より一般化可能性が高い!)もし興味があれば、f_n と f_∞ の値域を一般の距離空間に置き換えてみると面白いかもしれません。
by お名前(必須) (2019-04-22 05:24) 

ロイロット博士

ロビンソンの補題を使ってεδを回避するやり方、使いこなせるようにもっと理解したいと思います。

ディ二の定理では単調性の仮定を「各点xにおいて{f_n(x)}がnに伴い距離が単調非増加でf_∞(x)に収束」とすると、値域が一般の距離空間でも成立する(証明は絶対値を距離d_Yに置き換える)と思いますが、自信がなかったのでそこまでは書きませんでした。
by ロイロット博士 (2019-04-23 23:15) 

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