阪神大震災時の逐次鉄道復旧状況の記録(路線図つき)その2 [鉄道]
前記事に続き、1995年の阪神・淡路大震災からの鉄道復旧状況をキャラ路線図とともに振り返ります。
◎2月21日
運転再開
・山陽電鉄 東須磨〜須磨寺
◎3月1日
運転再開
・阪神本線 西灘〜岩屋
・阪急甲陽線 夙川〜甲陽園
阪急甲陽線は、完全孤立状態での再開です。
この日から路線図の記載範囲を縮小し、そのかわりに代行バスや連絡バスのある箇所を記載するようにしました。
◎3月10日
・JR神戸線 新長田駅営業再開
地下鉄の新長田駅はまだ休止中なので、乗り換えはできません。
◎3月11日
運転再開
・阪急伊丹線 新伊丹〜伊丹(仮駅)
阪急伊丹線が伊丹駅400m南側の仮駅で運転再開しました(図には記載していません)。
◎3月13日
運転再開
・阪急神戸線 王子公園〜三宮
東方面から三宮への鉄道アプローチの乗り継ぎが1箇所ですむようになりました。
◎3月16日
・神戸市交通局 三宮、新長田駅営業再開
両駅で地下鉄と他路線との乗り継ぎができるようになりました。
◎3月24日
運転再開
・山陽電鉄 板宿〜東須磨
◎3月31日
運転再開
・神戸電鉄 有馬口〜有馬温泉
・神戸市交通局 上沢駅営業再開
◎4月1日
運転再開
・JR神戸線 住吉〜灘
JR神戸線が全線再開し、神戸の東西が鉄道で繋がりました。
阪急と阪神の全線再開はさらに2ヶ月を要することになります。
◎4月7日
運転再開
・阪急神戸線 夙川〜岡本
◎4月8日
運転再開
・山陽新幹線 新大阪〜姫路
山陽新幹線が全線運転再開しました(路線図には新幹線は記載していません)。
◎4月9日
運転再開
・山陽電鉄 須磨寺〜須磨
山陽電鉄の部分開通区間が須磨でJRと乗り継ぎできるようになりました。
◎4月18日
運転再開
・山陽電鉄 須磨〜須磨浦公園
◎5月12日
運転再開
・六甲ライナー アイランド北口〜マリンパーク
◎5月22日
運転再開
・ポートライナー 中公園〜北埠頭
◎6月1日
運転再開
・阪急神戸線 夙川〜岡本
・神戸高速鉄道 三宮〜花隈
こま切れ状態だった阪急神戸線が、西宮北口〜夙川間を残してつながりました。
◎6月12日
運転再開
・阪急神戸線 西宮北口〜夙川
阪急神戸線が全線で運転再開し、阪急梅田〜新開地間が1本でつながりました。
◎6月16日
運転再開
・山陽電鉄 須磨浦公園〜滝の茶屋
同じくこま切れ状態だった山陽電鉄も、板宿から西側がつながりました。
◎6月18日
運転再開
・山陽電鉄、神戸高速鉄道 板宿〜長田
山陽電鉄が全線運転再開しました。
◎6月22日
運転再開
・神戸電鉄・神戸高速鉄道 新開地〜長田
神戸電鉄が全線運転再開しました。
◎6月26日
運転再開
・阪神本線 御影〜西灘
阪神電鉄が全線運転再開し、阪神間の全ての鉄道路線が復旧しました。
◎7月20日
運転再開
・六甲ライナー 魚崎〜アイランド北口
◎7月31日
運転再開
・ポートライナー 三宮〜中公園
◎8月13日
運転再開
・神戸高速鉄道 新開地〜高速長田
神戸高速鉄道が全線運転再開し、神戸の私鉄ネットワークが東西でつながりました。
僕のキャラ路線図もこの日で最後になりました。
◎8月23日
運転再開
・六甲ライナー 住吉〜魚崎
この日をもって、神戸周辺の被災地の鉄道路線は全て運転再開しました(ただし大開駅の再開は1996年1月17日、阪急伊丹駅の元箇所での再開は1998年11月21日になります)。
参考に、内閣府の資料ページへのリンクをつけておきます。
阪神・淡路大震災教訓情報資料集【07】鉄道の復旧
(前記事)
◎2月21日
運転再開
・山陽電鉄 東須磨〜須磨寺
◎3月1日
運転再開
・阪神本線 西灘〜岩屋
・阪急甲陽線 夙川〜甲陽園
阪急甲陽線は、完全孤立状態での再開です。
この日から路線図の記載範囲を縮小し、そのかわりに代行バスや連絡バスのある箇所を記載するようにしました。
◎3月10日
・JR神戸線 新長田駅営業再開
地下鉄の新長田駅はまだ休止中なので、乗り換えはできません。
◎3月11日
運転再開
・阪急伊丹線 新伊丹〜伊丹(仮駅)
阪急伊丹線が伊丹駅400m南側の仮駅で運転再開しました(図には記載していません)。
◎3月13日
運転再開
・阪急神戸線 王子公園〜三宮
東方面から三宮への鉄道アプローチの乗り継ぎが1箇所ですむようになりました。
◎3月16日
・神戸市交通局 三宮、新長田駅営業再開
両駅で地下鉄と他路線との乗り継ぎができるようになりました。
◎3月24日
運転再開
・山陽電鉄 板宿〜東須磨
◎3月31日
運転再開
・神戸電鉄 有馬口〜有馬温泉
・神戸市交通局 上沢駅営業再開
◎4月1日
運転再開
・JR神戸線 住吉〜灘
JR神戸線が全線再開し、神戸の東西が鉄道で繋がりました。
阪急と阪神の全線再開はさらに2ヶ月を要することになります。
◎4月7日
運転再開
・阪急神戸線 夙川〜岡本
◎4月8日
運転再開
・山陽新幹線 新大阪〜姫路
山陽新幹線が全線運転再開しました(路線図には新幹線は記載していません)。
◎4月9日
運転再開
・山陽電鉄 須磨寺〜須磨
山陽電鉄の部分開通区間が須磨でJRと乗り継ぎできるようになりました。
◎4月18日
運転再開
・山陽電鉄 須磨〜須磨浦公園
◎5月12日
運転再開
・六甲ライナー アイランド北口〜マリンパーク
◎5月22日
運転再開
・ポートライナー 中公園〜北埠頭
◎6月1日
運転再開
・阪急神戸線 夙川〜岡本
・神戸高速鉄道 三宮〜花隈
こま切れ状態だった阪急神戸線が、西宮北口〜夙川間を残してつながりました。
◎6月12日
運転再開
・阪急神戸線 西宮北口〜夙川
阪急神戸線が全線で運転再開し、阪急梅田〜新開地間が1本でつながりました。
◎6月16日
運転再開
・山陽電鉄 須磨浦公園〜滝の茶屋
同じくこま切れ状態だった山陽電鉄も、板宿から西側がつながりました。
◎6月18日
運転再開
・山陽電鉄、神戸高速鉄道 板宿〜長田
山陽電鉄が全線運転再開しました。
◎6月22日
運転再開
・神戸電鉄・神戸高速鉄道 新開地〜長田
神戸電鉄が全線運転再開しました。
◎6月26日
運転再開
・阪神本線 御影〜西灘
阪神電鉄が全線運転再開し、阪神間の全ての鉄道路線が復旧しました。
◎7月20日
運転再開
・六甲ライナー 魚崎〜アイランド北口
◎7月31日
運転再開
・ポートライナー 三宮〜中公園
◎8月13日
運転再開
・神戸高速鉄道 新開地〜高速長田
神戸高速鉄道が全線運転再開し、神戸の私鉄ネットワークが東西でつながりました。
僕のキャラ路線図もこの日で最後になりました。
◎8月23日
運転再開
・六甲ライナー 住吉〜魚崎
この日をもって、神戸周辺の被災地の鉄道路線は全て運転再開しました(ただし大開駅の再開は1996年1月17日、阪急伊丹駅の元箇所での再開は1998年11月21日になります)。
参考に、内閣府の資料ページへのリンクをつけておきます。
阪神・淡路大震災教訓情報資料集【07】鉄道の復旧
(前記事)
阪神大震災時の逐次鉄道復旧状況の記録(路線図つき)その1 [鉄道]
27年前、阪神・淡路大震災では、神戸周辺の鉄道も壊滅的な被害にあい、全面再開には数ヶ月を要しました。
当時はインターネットのWebサイトも一般的ではなく、そのかわりテキストベースのパソコン通信が情報交換によく使われていました。
その中でも、鉄道趣味人向けに開かれていた NIFTY-Serve の「鉄道フォーラム」では、鉄道の被害状況や運転再開状況、代替交通手段(バス、船舶、飛行機など)の状況が、事細かに交換されていて、いま当時のログを読み返すととても貴重な資料のように思えます。
僕もそのフォーラムに、日々の鉄道復旧状況を反映した路線図を、キャラクターで起こして投稿していました。
ここで、そのキャラ路線図とともに当時の鉄道復旧状況を振り返ってみることにします。
◎1995年1月17日 兵庫県南部地震発生
◎1月21日
周辺地域の路線が徐々に運転再開するものの、阪神間や神戸〜明石間は依然休止中。
神戸市内へ鉄道で向かうには、神戸電鉄・北神急行利用で北側から新神戸へのアプローチが唯一の手段でした。
この日からキャラ路線図の投稿を始めました。運転している路線を記載したものです。
◎1月23日
運転再開
・JR神戸線 須磨〜西明石
・阪急今津線 門戸厄神〜今津
◎1月25日
運転再開
・JR神戸線 甲子園口〜芦屋
この日から代替バスについても記載を始めました。
◎1月26日
運転再開
・阪神本線 甲子園〜青木
・阪神武庫川線 全線
◎1月28日
運転再開
・山陽電鉄 霞ヶ丘〜明石
◎1月30日
運転再開
・JR神戸線 神戸〜須磨(新長田は当面通過)
・阪急今津線 仁川〜宝塚
西側から神戸の中心部へアクセスできるようになりました。
◎1月31日
運転再開
・山陽電鉄 滝の茶屋〜霞ヶ丘
◎2月1日
運転再開
・阪神本線・神戸高速鉄道 三宮〜高速神戸
地震後初めて、神戸の中心三宮への鉄道が再開しました。
◎2月5日
運転再開
・阪急今津線 門戸厄神〜仁川
甲東園で山陽新幹線の橋桁が落下したため運転できなかった区間が復旧し、阪急今津線が全線で運転再開しました。
◎2月6日
運転再開
・神戸高速鉄道 花隈〜新開地
◎2月7日
運転再開
・神戸電鉄 長田〜鈴蘭台
神戸電鉄が長田まで再開したことにより、北方面へのルートがもう1本できました。
◎2月8日
運転再開
・JR神戸線 芦屋〜住吉
これからしばらくの間、JRの東方面からは住吉が終点になります。
◎2月11日
運転再開
・阪神本線 青木〜御影
これからしばらくの間、阪神の東方面からは御影が終点になります。
◎2月13日
運転再開
・阪急神戸線 御影〜王子公園
阪神御影やJR住吉から阪急御影まで歩いて乗り継ぐことにより、東方面から王子公園まで鉄道でアプローチできるようになりました。
◎2月15日
運転再開
・JR和田岬線 兵庫〜和田岬
◎2月16日
運転再開
・神戸市交通局 板宿〜新神戸(新長田、上沢、三宮は当面通過)
神戸市営地下鉄が全線再開しました。ただし未復旧の3駅は通過し、他線へ乗り換えできる駅がひとつもない状態での再開です。
◎2月20日
運転再開
・JR神戸線 灘〜神戸
・阪神本線 岩屋〜三宮
西方面から三宮へのJRでのアプローチができるようになり、また、曲がりなりにも鉄道の乗り継ぎによる東西横断が可能になりました。
(続く)
当時はインターネットのWebサイトも一般的ではなく、そのかわりテキストベースのパソコン通信が情報交換によく使われていました。
その中でも、鉄道趣味人向けに開かれていた NIFTY-Serve の「鉄道フォーラム」では、鉄道の被害状況や運転再開状況、代替交通手段(バス、船舶、飛行機など)の状況が、事細かに交換されていて、いま当時のログを読み返すととても貴重な資料のように思えます。
僕もそのフォーラムに、日々の鉄道復旧状況を反映した路線図を、キャラクターで起こして投稿していました。
ここで、そのキャラ路線図とともに当時の鉄道復旧状況を振り返ってみることにします。
◎1995年1月17日 兵庫県南部地震発生
◎1月21日
周辺地域の路線が徐々に運転再開するものの、阪神間や神戸〜明石間は依然休止中。
神戸市内へ鉄道で向かうには、神戸電鉄・北神急行利用で北側から新神戸へのアプローチが唯一の手段でした。
この日からキャラ路線図の投稿を始めました。運転している路線を記載したものです。
◎1月23日
運転再開
・JR神戸線 須磨〜西明石
・阪急今津線 門戸厄神〜今津
◎1月25日
運転再開
・JR神戸線 甲子園口〜芦屋
この日から代替バスについても記載を始めました。
◎1月26日
運転再開
・阪神本線 甲子園〜青木
・阪神武庫川線 全線
◎1月28日
運転再開
・山陽電鉄 霞ヶ丘〜明石
◎1月30日
運転再開
・JR神戸線 神戸〜須磨(新長田は当面通過)
・阪急今津線 仁川〜宝塚
西側から神戸の中心部へアクセスできるようになりました。
◎1月31日
運転再開
・山陽電鉄 滝の茶屋〜霞ヶ丘
◎2月1日
運転再開
・阪神本線・神戸高速鉄道 三宮〜高速神戸
地震後初めて、神戸の中心三宮への鉄道が再開しました。
◎2月5日
運転再開
・阪急今津線 門戸厄神〜仁川
甲東園で山陽新幹線の橋桁が落下したため運転できなかった区間が復旧し、阪急今津線が全線で運転再開しました。
◎2月6日
運転再開
・神戸高速鉄道 花隈〜新開地
◎2月7日
運転再開
・神戸電鉄 長田〜鈴蘭台
神戸電鉄が長田まで再開したことにより、北方面へのルートがもう1本できました。
◎2月8日
運転再開
・JR神戸線 芦屋〜住吉
これからしばらくの間、JRの東方面からは住吉が終点になります。
◎2月11日
運転再開
・阪神本線 青木〜御影
これからしばらくの間、阪神の東方面からは御影が終点になります。
◎2月13日
運転再開
・阪急神戸線 御影〜王子公園
阪神御影やJR住吉から阪急御影まで歩いて乗り継ぐことにより、東方面から王子公園まで鉄道でアプローチできるようになりました。
◎2月15日
運転再開
・JR和田岬線 兵庫〜和田岬
◎2月16日
運転再開
・神戸市交通局 板宿〜新神戸(新長田、上沢、三宮は当面通過)
神戸市営地下鉄が全線再開しました。ただし未復旧の3駅は通過し、他線へ乗り換えできる駅がひとつもない状態での再開です。
◎2月20日
運転再開
・JR神戸線 灘〜神戸
・阪神本線 岩屋〜三宮
西方面から三宮へのJRでのアプローチができるようになり、また、曲がりなりにも鉄道の乗り継ぎによる東西横断が可能になりました。
(続く)
続・超フィルターによる全順序集合の拡大 [数学]
昨年の12月に書いた「超フィルターによる全順序集合の拡大」の記事の続きです。
全順序集合 $X$ に対し、$X$ 上の超フィルター間に擬順序関係を定め、それを使って全順序集合 $\widehat{X}$ を構成し、$X$ を $\widehat{X}$ に埋め込みました。
この $\widehat{X}$ がどんな構造になっているかを、もう少しきちんと調べてみます。
まず、元の $X$ を2個の部分に「切断」します。具体的には、$X$ の2個の部分集合の組 $X_1, X_2$ で、次の性質を持つものを考えます。
\begin{equation*}
X_1 \neq \emptyset \ \land \ X_2 \neq \emptyset \ \land \ X_1 \cup X_2 = X \ \land \ X_1 < X_2
\end{equation*}
ここで最後の式は $\forall x_1 \in X_1 \, \forall x_2 \in X_2 \, (x_1 < x_2)$ の略記です。この条件をみたす組 $(X_1, X_2)$ を $X$ の切断と呼ぶことにします(切断が存在すれば、当然 $X$ は2個以上の元を持ちますので、以下そのことを仮定します)。
$X$ が有理数体 $\mathbb{Q}$ のときは、切断がそれぞれ唯一の実数に対応するという有名な事実がありました。しかし超フィルターから構成した今回の $\widehat{X}$ では、$X_1$ の上限と $X_2$ の下限に対応するそれぞれ別の $\widehat{X}$ の元が存在するのです。
(証明)任意の $a \in X_1$ に対して、
\begin{equation*}
I_a = \{ \, x \in X_1 \, \mid \, a \le x \, \}
\end{equation*}
とおくと、$I_a$ は $X$ の区間であり、これら $I_a$ の全体からなる集合族は明らかに有限交差性を持つので、それらを含む超フィルター $\mathbf{A}$ が作れ、$\alpha = [\mathbf{A}]$ が $\widehat{X}$ の元として定まる。同様に、任意の $b \in X_2$ に対して、
\begin{equation*}
I_b = \{ \, x \in X_2 \, \mid \, x \le b \, \}
\end{equation*}
とおくと、これらの区間 $I_b$ の全体を含む超フィルター $\mathbf{B}$ が作れ、$\beta = [\mathbf{B}]$ が $\widehat{X}$ の元として定まる。作り方から明らかに $\lnot(\mathbf{B} \preceq \mathbf{A})$ なので $\alpha < \beta$ である。ある $a \in X_1$ が $\alpha < a$ となったと仮定すると、ある $A \in \mathbf{A}$ が $A < \{ a \}$ をみたすが、これから $A \cap I_a = \emptyset$ が従うから $\mathbf{A}$ のフィルターの条件に反し矛盾であり、従って $\forall x \in X_1 \, (x \le \alpha)$ が成立する。$\forall x \in X_2 \, (\beta \le x)$ も同様に示される。
$\alpha, \beta$ がそれぞれ唯一に定まることを示す。このためには、
\begin{equation*}
\forall x \in X_1 \, (x \le \alpha) \land \alpha < \gamma < \beta \land \forall x \in X_2 \, (\beta \le x)
\end{equation*}
をみたす $\alpha, \beta, \gamma \in \widehat{X}$ が存在しえないことを示せばよい(唯一に定まらなければ必ずこのような順序関係になる $\widehat{X}$ の3個の元が存在する)。そこでこれらが存在すると仮定して矛盾を導く。$\alpha = [\mathbf{A}], \beta = [\mathbf{B}], \gamma = [\mathbf{C}]$ とすると、$\alpha < \gamma < \beta$ より、
\begin{equation*}
A < C_1\ \land \ C_2 < B
\end{equation*}
をみたす $A \in \mathbf{A}, C_1, C_2 \in \mathbf{C}, B \in \mathbf{B}$ が存在する。$\mathbf{C}$ のフィルターの条件より $c \in C_1 \cap C_2$ となる $c \in X$ が存在し、
\begin{equation*}
A < \{ c \} < B
\end{equation*}
が成り立つが、$c$ で生成される $X$ 上の単項フィルター $\uparrow c$ によって $\widehat{X}$ 上で $c = [ \uparrow c ]$ とみなされるから、$\alpha < c < \beta$ が成り立ち、$c \in X_1$ としても $c \in X_2$ としても矛盾である。従って $\alpha, \beta$ は唯一に定まる。□
逆に、任意に $\widehat{X}$ の元 $\gamma$ を取ると、それは
① ある $X$ の切断の境界に位置し、切断の下側の上限か、または上側の下限となる。
② 全ての $X$ の元より大きい。
③ 全ての $X$ の元より小さい。
のどれかになります。そして、②をみたす $\widehat{X}$ の元は、任意の $a \in X$ に対して、
\begin{equation*}
I_a = \{ \, x \in X \, \mid \, a \le x \, \}
\end{equation*}
で定まる $X$ の区間 $I_a$ の全体を含む超フィルターから構成できて、同様に③をみたす $\widehat{X}$ の元は、任意の $b \in X$ に対して、
\begin{equation*}
I_b = \{ \, x \in X \, \mid \, x \le b \, \}
\end{equation*}
で定まる $X$ の区間 $I_b$ の全体を含む超フィルターから構成できて、それぞれ唯一に定まります。
以上で全順序集合 $X$ から超フィルターによって構成された $\widehat{X}$ の構造が明らかになりました。また、前回で証明を省略した「 $\widehat{X}$ は順序完備である」という事実についても、$\widehat{X}$ の任意の切断に対してそれに対応する $X$ の切断を考えて【定理】を適用することにより、切断の境界に位置する $\widehat{X}$ の元が高々2個存在することがわかるので、これで順序完備であることが証明できました。
これ、何に使えるんでしょうか?まだよくわかりません。
(続く)(前記事)
全順序集合 $X$ に対し、$X$ 上の超フィルター間に擬順序関係を定め、それを使って全順序集合 $\widehat{X}$ を構成し、$X$ を $\widehat{X}$ に埋め込みました。
この $\widehat{X}$ がどんな構造になっているかを、もう少しきちんと調べてみます。
まず、元の $X$ を2個の部分に「切断」します。具体的には、$X$ の2個の部分集合の組 $X_1, X_2$ で、次の性質を持つものを考えます。
\begin{equation*}
X_1 \neq \emptyset \ \land \ X_2 \neq \emptyset \ \land \ X_1 \cup X_2 = X \ \land \ X_1 < X_2
\end{equation*}
ここで最後の式は $\forall x_1 \in X_1 \, \forall x_2 \in X_2 \, (x_1 < x_2)$ の略記です。この条件をみたす組 $(X_1, X_2)$ を $X$ の切断と呼ぶことにします(切断が存在すれば、当然 $X$ は2個以上の元を持ちますので、以下そのことを仮定します)。
$X$ が有理数体 $\mathbb{Q}$ のときは、切断がそれぞれ唯一の実数に対応するという有名な事実がありました。しかし超フィルターから構成した今回の $\widehat{X}$ では、$X_1$ の上限と $X_2$ の下限に対応するそれぞれ別の $\widehat{X}$ の元が存在するのです。
【定理】$X$ の切断 $(X_1, X_2)$ に対して、
\begin{equation*}
\forall x \in X_1 \, (x \le \alpha) \ \land \ \alpha < \beta \ \land \ \forall x \in X_2 \, (\beta \le x)
\end{equation*}
となるような $\widehat{X}$ の2個の元 $\alpha, \beta$ がそれぞれ唯一存在する。
(証明)任意の $a \in X_1$ に対して、
\begin{equation*}
I_a = \{ \, x \in X_1 \, \mid \, a \le x \, \}
\end{equation*}
とおくと、$I_a$ は $X$ の区間であり、これら $I_a$ の全体からなる集合族は明らかに有限交差性を持つので、それらを含む超フィルター $\mathbf{A}$ が作れ、$\alpha = [\mathbf{A}]$ が $\widehat{X}$ の元として定まる。同様に、任意の $b \in X_2$ に対して、
\begin{equation*}
I_b = \{ \, x \in X_2 \, \mid \, x \le b \, \}
\end{equation*}
とおくと、これらの区間 $I_b$ の全体を含む超フィルター $\mathbf{B}$ が作れ、$\beta = [\mathbf{B}]$ が $\widehat{X}$ の元として定まる。作り方から明らかに $\lnot(\mathbf{B} \preceq \mathbf{A})$ なので $\alpha < \beta$ である。ある $a \in X_1$ が $\alpha < a$ となったと仮定すると、ある $A \in \mathbf{A}$ が $A < \{ a \}$ をみたすが、これから $A \cap I_a = \emptyset$ が従うから $\mathbf{A}$ のフィルターの条件に反し矛盾であり、従って $\forall x \in X_1 \, (x \le \alpha)$ が成立する。$\forall x \in X_2 \, (\beta \le x)$ も同様に示される。
$\alpha, \beta$ がそれぞれ唯一に定まることを示す。このためには、
\begin{equation*}
\forall x \in X_1 \, (x \le \alpha) \land \alpha < \gamma < \beta \land \forall x \in X_2 \, (\beta \le x)
\end{equation*}
をみたす $\alpha, \beta, \gamma \in \widehat{X}$ が存在しえないことを示せばよい(唯一に定まらなければ必ずこのような順序関係になる $\widehat{X}$ の3個の元が存在する)。そこでこれらが存在すると仮定して矛盾を導く。$\alpha = [\mathbf{A}], \beta = [\mathbf{B}], \gamma = [\mathbf{C}]$ とすると、$\alpha < \gamma < \beta$ より、
\begin{equation*}
A < C_1\ \land \ C_2 < B
\end{equation*}
をみたす $A \in \mathbf{A}, C_1, C_2 \in \mathbf{C}, B \in \mathbf{B}$ が存在する。$\mathbf{C}$ のフィルターの条件より $c \in C_1 \cap C_2$ となる $c \in X$ が存在し、
\begin{equation*}
A < \{ c \} < B
\end{equation*}
が成り立つが、$c$ で生成される $X$ 上の単項フィルター $\uparrow c$ によって $\widehat{X}$ 上で $c = [ \uparrow c ]$ とみなされるから、$\alpha < c < \beta$ が成り立ち、$c \in X_1$ としても $c \in X_2$ としても矛盾である。従って $\alpha, \beta$ は唯一に定まる。□
逆に、任意に $\widehat{X}$ の元 $\gamma$ を取ると、それは
① ある $X$ の切断の境界に位置し、切断の下側の上限か、または上側の下限となる。
② 全ての $X$ の元より大きい。
③ 全ての $X$ の元より小さい。
のどれかになります。そして、②をみたす $\widehat{X}$ の元は、任意の $a \in X$ に対して、
\begin{equation*}
I_a = \{ \, x \in X \, \mid \, a \le x \, \}
\end{equation*}
で定まる $X$ の区間 $I_a$ の全体を含む超フィルターから構成できて、同様に③をみたす $\widehat{X}$ の元は、任意の $b \in X$ に対して、
\begin{equation*}
I_b = \{ \, x \in X \, \mid \, x \le b \, \}
\end{equation*}
で定まる $X$ の区間 $I_b$ の全体を含む超フィルターから構成できて、それぞれ唯一に定まります。
以上で全順序集合 $X$ から超フィルターによって構成された $\widehat{X}$ の構造が明らかになりました。また、前回で証明を省略した「 $\widehat{X}$ は順序完備である」という事実についても、$\widehat{X}$ の任意の切断に対してそれに対応する $X$ の切断を考えて【定理】を適用することにより、切断の境界に位置する $\widehat{X}$ の元が高々2個存在することがわかるので、これで順序完備であることが証明できました。
これ、何に使えるんでしょうか?まだよくわかりません。
(続く)(前記事)